資金繰り表の作り方|3か月先の不足額を出す手順
更新日: 2026-08-20
この記事でわかること
- 様式は日本政策金融公庫が無料で配布しています
- 表は前月繰越金から翌月繰越金までの積み上げ構造です
- まず実績3か月分を通帳と請求書から埋めます
- 予定は借入金返済と売掛金入金日から先に置けます
- 詳しい様式と簡易版は目的に応じて使い分けます
目次
まず結論:様式は公的機関が無料で配っています
資金繰り表を、自分でゼロから設計する必要はありません。日本政策金融公庫が無料で様式を配布しているので、まずはそれをそのまま使うのが結論です。
同公庫のサイトからは、3種類の様式がダウンロードできます。「資金繰り表」(Excel)、「資金繰り表(簡易版)」(WordとExcelの両方)、そして「資金繰り表(記入例)」(Excel)です。項目もレイアウトもすでに決まっているため、表を作る作業ではなく、数字を埋める作業に集中できます。
なぜこの様式でよいのか。様式には「この書類は、お客さまのご商売の状況の確認に活用させていただきます」という注記があり、融資の相談窓口にそのまま提出できる前提で作られているからです。自作の表で相談に行くより、この様式を埋めておくほうが話が早く進みます。
まず先に、資金繰りがなぜ悪化するのかを知りたい方は、資金繰り悪化の原因を3つの収支で見つけるもあわせてご覧ください。
仕組み:表は3つの収支と、繰越金でできています
表の骨格はシンプルです。前月繰越金(A)からスタートし、そこに3つの収支を積み上げていくと、翌月繰越金(G)にたどり着きます。
3つの収支とは、日々の商売から生まれる経常収支、それ以外で生じる経常外収支、借入や返済にかかわる財務収支です。経常収支は、現金売上や売掛金回収などの収入から、現金仕入や人件費などの支出を引いた差引過不足(D)として表れます。経常外収支は経常外収入と経常外支出の計として(E)にまとまり、財務収支は借入金の収入と返済の支出をまとめた財務収支計(F)になります。
これらを足すと、式は次のようになります。
(A)+(D)+(E)+(F)=(G)
そしてこの(G)、つまり「翌月繰越金」の行こそが、資金繰り表で見るべき答えです。ここがマイナスになる月があれば、その月までに手を打つ必要がある、ということが一目で分かります。
黒字であっても、この(G)がマイナスになることはあります。売上と手元の現金は別物だからです。その理由を詳しく知りたい方は、黒字なのに資金が足りない理由もご参照ください。
手順:まず実績を3か月分うめます
最初にやることは、直近3か月分の実績を埋めることです。様式には【実績】欄と【予定】欄が分かれているので、まずは【実績】側だけを埋めます。
収入側は、現金売上、売掛金回収、受取手形入金・割引、その他の4項目です。通帳の入金記録と請求書を突き合わせながら、月ごとに転記していきます。支出側は、現金仕入、買掛金支払、手形決済、外注加工費、人件費、諸経費、支払利息の7項目です。項目数は多いですが、通帳の出金と支払明細を順に拾っていけば、迷うことはありません。
実績は、通帳と請求書という事実に基づいて埋めます。記憶や感覚で数字を入れると、後の予定欄の精度まで崩れてしまいます。
科目の数が多く感じられても、通帳の明細を上から順に、収入と支出へ仕分けていくだけの作業です。最初の1か月だけ丁寧に項目を当てはめておけば、2か月目以降は迷う場面がぐっと減ります。
3か月分を埋め終えたら、様式にある「合計」欄と「(月平均)」欄も自動的に埋まります。ここで、「(参考)前年同月の売上高」欄も一緒に記入しておきましょう。前年の同じ月と比べることで、今の数字が季節的なものか、それとも構造的な変化なのかを見分けやすくなります。
手順:次に予定を3か月分置きます
実績が埋まったら、次は【予定】欄に3か月先までの数字を置いていきます。ここが資金繰り表の本番です。予定欄は実績欄よりも埋めにくく感じるかもしれません。ですが、確定している項目から先に置いていくと、空欄は自然と絞り込まれていきます。
まず、借入金返済(短期)と借入金返済(長期)から埋めるのがおすすめです。返済額はすでに確定しているため、迷う余地がなく先に置いてしまえる項目です。
次に悩むのが、売掛金の入金予定日をどこに置くかです。ここで手がかりになるのが、中小企業庁が示す下請取引のルールです。「給付を受領した日(役務の提供を受けた日)から60日以内で、かつ出来る限り短い期間内に定める義務」があるとされています。取引先との契約でこの上限を確認すれば、入金日をおおよそ絞り込めます。禁止行為として支払遅延の禁止も定められているため、通常であればこの範囲内での入金が前提になります。
入りを早め、出を遅らせるという考え方を、予定欄の置き方にも反映させたい方は、資金繰りを改善する順番|入りを早め、出を遅らせるをご覧ください。
比較:詳しい様式と簡易版のどちらを使うか
日本政策金融公庫が配布している様式には、「資金繰り表」と「資金繰り表(簡易版)」の2種類があります。どちらが優れているというものではなく、目的に応じた使い分けの問題です。
簡易版は、WordとExcelの両方で配布されており、「(単位:千円)」という表記が入っています。細かい端数を省いて、大まかな流れをつかみたいときに向いた作りです。細部の根拠までは求めない場面で、扱いやすい様式といえます。
一方、詳しい様式の「資金繰り表」には、支払利息の項目や、「(売上高、売上原価、経費等の算出根拠)」欄まで用意されています。数字の根拠まで残しておきたい場合や、金融機関への相談で細部まで説明したい場合には、こちらのほうが対応しやすい作りになっています。
どちらを選ぶにしても、まずは1つの様式で3か月分を埋め切ることが優先です。
注意点:予定を甘く置くと、表の意味がなくなります
予定欄は、希望的な数字ではなく、根拠のある数字で埋めることが大切です。売上が伸びる前提や、入金が早まる前提を安易に置いてしまうと、表そのものの意味がなくなってしまいます。
この様式には、「この書類は、お客さまのご商売の状況の確認に活用させていただきます。お手数ですが、可能な範囲でご記入いただき、ご提出ください」という注記があります。つまりこれは、自分だけが見るメモではなく、提出先がある書類だということです。
提出先がある以上、置いた数字には理由を説明できる状態にしておく必要があります。根拠が説明できない数字のまま提出してしまうと、相談の場でかえって信頼を損ねかねません。
もし資金繰りの悪化がすでに見えていて、借入以外の選択肢も含めて検討したい場合は、ファクタリングとは?借金との違いを一から解説もあわせてご確認ください。
費用:作るのにお金はかかりません
資金繰り表を作ること自体には、費用はかかりません。日本政策金融公庫の様式は、いずれも無料でダウンロードできます。
あわせて知っておきたいのが、経済産業省が案内しているローカルベンチマーク(通称:ロカベン)です。これは「企業の経営状態の把握、いわゆる『企業の健康診断』を行うツール」とされており、「無料で、自社の経営の現状把握や経営分析ができます」とされています。構成は「『6つの指標』(財務面)、『商流・業務フロー』、『4つの視点』(非財務面)の3枚組のシート」です。
資金繰り表が3か月先の資金の流れを映すものだとすれば、ロカベンは会社全体の状態を映すものです。どちらも無料で使える点は共通しています。
今日やる一歩
今日できることは、3つです。
1つ目は、日本政策金融公庫の様式をダウンロードすることです。「資金繰り表」でも「簡易版」でも構いません。2つ目は、先月分の実績を通帳で埋めることです。現金売上と売掛金回収から始めれば、手が止まりにくくなります。3つ目は、埋め終えたら「翌月繰越金」の行を見ることです。この行がマイナスに近づいていないか、それだけを確認してください。
3か月分を埋め終えたときに、初めて自社の資金繰りの見通しが見える形になります。
参考にした公的資料
- 日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」
- 日本政策金融公庫「資金繰り表」様式(Excel)
- 中小企業庁「中小受託取引適正化法」
- 経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」
- 経済産業省「ローカルベンチマーク(ロカベン)シート」
このページは資金調達の判断材料をお伝えするものであり、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。制度や条件は変わることがあります。実際のお手続きの前に、必ず各機関・各社の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
資金繰り表はどこで手に入りますか。
日本政策金融公庫のサイトから、「資金繰り表」「資金繰り表(簡易版)」「資金繰り表(記入例)」を無料でダウンロードできます。
資金繰り表のどこを見れば不足額が分かりますか。
「翌月繰越金(G)」の行がマイナスになっていないかを確認します。(A)+(D)+(E)+(F)=(G)で計算されます。
売掛金の入金予定日はどう置けばよいですか。
下請取引では給付受領日から60日以内で入金日を定める義務があるとされており、これが目安になります。
資金繰り表を作るのに費用はかかりますか。
日本政策金融公庫の様式はいずれも無料でダウンロードでき、作成自体に費用はかかりません。