黒字なのに資金が足りない理由|やめた会社の半数は黒字でした

更新日: 2026-08-07

この記事でわかること

  • 休廃業・解散した企業の51.1%が黒字だったこと(2024年)
  • 利益と現金が一致しない4つの理由
  • 手元にいくら現金が必要かを出す計算式
  • 売上が伸びているときほど現金が減る仕組み
  • 資金繰り表を、月末ではなく支払日基準で作ること
目次

決算書は黒字。それなのに、月末の支払いに足りない。

自分の経営が間違っているのではないか。そう思われたかもしれません。

このページでは、なぜ黒字でも現金が足りなくなるのかを説明します。そして、どうすればよいかをお伝えします。

最初に、これがあなただけの問題ではないことを数字で示します。次に、利益と現金がずれる理由を説明します。そのあと、手元にいくら必要かを計算します。最後に、明日からできることをご案内します。

まず結論:やめた会社の半数は黒字だった

先に、事実をお伝えします。

休廃業・解散した企業のうち、黒字だった企業の割合は51.1%です(2024年)。

中小企業白書に公表されている数字です(出典: 中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第8節 開業、倒産・休廃業」・2026年8月7日確認)。

事業をやめた会社の半分以上が、赤字ではありませんでした。

つまり、利益が出ているかどうかと、事業を続けられるかどうかは別の問題です。

これは経営の巧拙の話ではありません。仕組みの問題です。だから、仕組みで対処できます。

仕組み:利益と現金がずれる4つの理由

なぜずれるのか。理由は4つあります。

1. 入金より先に支払いが来る

いちばん大きな理由です。

利益は「売上が立った時点」で計算します。商品を納めた月、工事が終わった月に売上として記録されます。

しかし現金は「入金された時点」でしか増えません。

その間に1か月から3か月あります。一方、仕入代金や人件費は、売上が立つ前に出ています。

この時間差の分を、ずっと立て替え続けている状態です。

2. 借入の返済は経費にならない

これも見落とされます。

毎月の返済のうち、利息は経費になりますが、元金は経費になりません。

つまり、元金の返済分は利益から出ていきます。決算書で100万円の利益が出ていても、元金の返済が年間120万円あれば、現金は20万円減っています。

3. 設備投資は一度に経費にならない

300万円の機械を買っても、その年の経費になるのは減価償却の分だけです。

現金は300万円出ていきますが、経費になるのは数年に分けてです。だから利益は残っているように見えます。

4. 在庫は経費にならない

仕入れた商品が売れるまで、それは在庫です。

お金は払っていますが、経費にはなっていません。在庫が増えるほど、現金は減って利益は残ります。

利益は帳簿の数字、現金は通帳の数字。別々に見る必要があります。

注意点:売上が伸びているときほど危ない

ここが最も誤解されやすいところです。

売上が伸びると、必要な現金は増えます。

理由は簡単です。売上が2倍になれば、仕入も人件費も2倍になります。それらは入金より先に出ていきます。

計算してみます。

  • 月商500万円、入金は2か月後、原価率60%
  • 立て替える額 = 300万円 × 2か月 = 600万円

月商が1,000万円に増えると、立替は1,200万円になります。600万円の現金が追加で必要です。

これを増加運転資金といいます。

好調なときほど資金が要る。この逆転を知らないと、「売れているのになぜ苦しいのか」が分からなくなります。

条件:手元にいくら必要か

では、いくらあればよいのか。

まず計算してください。

毎月必ず出ていく額(固定費+返済) ÷ 現在の預金残高

これで何か月分の余裕があるかが分かります。

手元の月数状態
3か月分以上余裕がある
1.5〜3か月分標準的
1〜1.5か月分注意が必要
1か月分未満いつ止まってもおかしくない

入金までの期間が長い業種ほど、多く必要になります。工事が終わるまで入金がない、報酬が2か月後に入る、といった業種は3か月分を目標にしてください。

手順:明日からできること

理由が分かったところで、実際に何をするか。効果の大きい順に3つです。

1. 資金繰り表を、支払日基準で作る

多くの方は月末残高で管理しています。しかし資金が詰まるのは月末ではありません。

給与日、家賃の引き落とし日、リースの引き落とし日。その日の前日に、いくら残っているかで管理してください。

作り方は簡単です。今後6か月について、次を並べます。

  • 確定している入金と、その日付
  • 必ず出ていく支払いと、その日付
  • 各支払日の前日残高

入金は確定しているものだけを書いてください。見込みを混ぜると意味がなくなります。

月末ではなく、給与日や引き落とし日の前日残高で見ます。

2. 入金を早める

売上を増やすより確実で、しかも効果が毎月続きます。

取引額の大きい取引先に、締めの回数を月1回から月2回にできないか相談してください。相手にとって支払総額は変わらないため、通りやすい交渉です。

リスケ・支払条件の交渉の進め方を読む

3. 時間があるうちに借りておく

これは逆説的に聞こえるかもしれません。

金融機関は、苦しくなってからでは貸してくれません。黒字で余裕があるうちのほうが、条件よく借りられます。

公的融資なら金利は年1〜3%程度です。増加運転資金は前向きな資金需要として説明しやすく、審査でも通りやすい部類に入ります。

公的融資とは(公庫・制度融資・マル経)

比較:それでも今月が足りないとき

計画を立てても、目の前の支払いには間に合わないことがあります。

取引先に出した請求書があれば、入金日を待たずに現金にできます。借入ではないため、審査で主に見られるのは自社ではなく取引先の支払い能力です。

黒字の会社には、1つ有利な点があります。時間さえあれば、公的融資という安い手段が使えます。

手数料の高い手段は、その時間を稼ぐためだけに使ってください。並行して公的融資の申込を進めるのが正しい使い方です。

手数料の相場と年利換算を読む

今日やる一歩

このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。

  • いま余裕がない——固定費の合計を出し、預金残高が何か月分か計算する
  • 売上が伸びている——増加運転資金がいくら要るか、原価率と入金月数から計算する
  • まだ余裕がある——公的融資の相談に行く。苦しくなってからでは遅くなります

計算は15分で終わります。数字が見えると、打つ手も具体的になります。

条件(時間・立場・金額)から絞り込む

参考にした公的資料

このページは、資金調達と関連制度の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。必要な手元資金は業種や事業の形によって変わります。実際の判断にあたっては、顧問税理士へご相談ください。

よくある質問

黒字なのに資金が足りなくなるのは、なぜですか?

利益は「売上が立った時点」で計算しますが、現金は「入金された時点」でしか増えないためです。売上を計上してから入金までに1〜3か月かかる一方、仕入代金や人件費はその前に出ていきます。この時間差の分だけ、現金を立て替え続けることになります。

黒字で事業をやめる会社は、どれくらいありますか?

中小企業白書では、休廃業・解散した企業のうち黒字だった企業の割合が公表されています。2024年は51.1%で、過半数を占めています。減少傾向にはありますが、利益が出ていても事業を続けられなくなる場合があることを示しています。

手元にいくら現金があれば安心ですか?

業種によりますが、月商の1.5か月分から3か月分が一つの目安とされます。入金までの期間が長い業種ほど多く必要です。まずは「毎月出ていく固定費×何か月分あるか」を計算してください。1か月分を切っている場合は、いつ止まってもおかしくない状態です。

売上が伸びているのに苦しいのはなぜですか?

売上が伸びると、仕入や人件費の立替も比例して増えるためです。入金は後から来るので、成長している間はずっと現金が先に出ていきます。これを増加運転資金といいます。好調なときほど資金が必要になるという逆転が起こります。

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