社会保険料が払えないとき|換価の猶予で差押えを止める

更新日: 2026-08-07

この記事でわかること

  • 年金事務所に申請すれば分割払いにでき、その間は差押えが止まること
  • 申請の期限は「納期限から6か月以内」で、過ぎると使えなくなること
  • 電話と窓口で、そのまま使える言い方
  • 相談に持っていく5つの書類と、資金繰り表の作り方
  • 初回の納付分をどう用意するか(費用の安い順)
目次

会社の社会保険料が払えない。従業員から預かった分もあります。ほかの支払いより気が重いところだと思います。

このページでは、差押えを止めるために、何をどの順番でやるかを説明します。

最初に結論をお伝えします。次に、年金事務所に申請できる制度の中身を説明します。そのあと、電話での言い方と持ち物をお示しします。最後に、お金そのものをどう作るかに触れます。

まず結論:放置しなければ分割にできる

先に結論です。

社会保険料は、年金事務所に申請すれば分割払いが認められる場合があります。その間は差押えも止まります。

この制度を「換価の猶予(かんかのゆうよ)」といいます。

日本年金機構は、次のように説明しています。換価の猶予が認められると、財産の差押えが猶予されます。財産を売られること(換価)も猶予されます(出典: 日本年金機構の案内・2026年8月7日確認)。

つまり、払えないこと自体より、黙っているほうが危険です。

督促を無視したまま時間が経つと、預金や売掛金が差し押さえられます。売掛金が差し押さえられると、取引先に通知が行きます。事業への打撃は、ここで一気に大きくなります。

では、その制度の中身を見ていきます。

仕組み:換価の猶予とはどんな制度か

申請する前に、条件と期間を知っておいてください。

ここを分かっているかどうかで、窓口での話の進み方が変わります。

日本年金機構の案内をもとにすると、要点は4つです。

項目内容
申請の期限納期限から6か月以内
猶予される期間1年以内
効果財産の差押え・換価(売却)が止まる
延滞金一部が免除される場合がある

(出典: 日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予」・2026年8月7日確認)

見落とされやすいのが、申請の期限です。

納期限から6か月を過ぎると、申請による換価の猶予は使えなくなります。払えないまま半年放置すると、この選択肢そのものが消えます。

なお、災害にあった場合など、特別な事情があるときは「納付の猶予」という別の制度もあります。どちらに当たるかは窓口が判断します。自分で決めずに、事情をそのまま伝えてください。

税金にも同じ考え方の制度があります。国税の窓口は税務署です。

税金を滞納しているときの動き方を読む

電話は5分で終わります。まず相談の予約だけ取ります。

手順:年金事務所へ電話をかける

制度があると分かっても、電話をかけるところで手が止まります。

ここは、そのまま使える言葉でお示しします。

まず電話で第一報を入れます。長い説明はいりません。

◯◯株式会社の◯◯と申します。厚生年金保険料の納付についてご相談させてください。資金繰りの都合で、期日までの一括納付が難しい見込みです。分割での納付をご相談したく、伺う日をいただけますでしょうか。

大事なのは、伝え方です。

「払わない」ではなく、「払う意思はあるが、一括が難しい」と伝えてください。制度の目的が、納める意思のある事業者を支えることにあるからです。

文例:窓口では金額を自分から出す

来所したときの言い方です。

現在の滞納額は◯◯円です。毎月◯◯円であれば、確実にお納めできます。◯月に◯◯社からの入金が◯◯円ございますので、その月は上乗せして◯◯円お納めしたいと考えております。資金繰り表をお持ちしました。

「毎月いくらなら払えるか」を自分から言えると、話が一度で進みます。

「できるだけ払います」と答えると、相手は判断できません。その場では結論が出ず、また出直しになります。

窓口で足りないと言われて出直すのが、いちばんの時間の無駄です。

換価の猶予の申請と6か月の期限を読む

条件:相談に持っていくもの

窓口で足りないと言われて出直すのが、いちばん時間の無駄です。

持ち物は5つです。

  • 直近の決算書(できれば2期分)
  • 直近の試算表
  • 今後6か月ぶんの資金繰り表
  • 預金通帳の直近の記帳分
  • 滞納の内訳が分かる納入告知書や督促状

このうち、資金繰り表だけは手元にないことが多いと思います。先に作ってください。

作り方は難しくありません。今後6か月について、入るお金と出るお金を月ごとに並べます。そして、月末に残る額を計算します。それだけです。

コツが1つあります。入るお金は、確定しているものだけを書いてください。見込みを混ぜると、窓口で根拠を聞かれたときに答えられません。

比較:お金そのものをどう作るか

猶予が認められても、分割の初回は払わなければなりません。

ここでお金が要ります。安い順に当たっていきます。

まず、借りずに済ませられないか

費用がかからない方法から試します。

たとえば、仕入先への支払いを1か月待ってもらう方法があります。銀行への返済を一時的に減らしてもらう方法(リスケジュール)もあります。

どちらも手数料はかかりません。切り出し方は次のページにまとめました。

リスケ・支払条件の交渉の進め方を読む

2週間以上あるなら、公的融資

金利は年1〜3%程度です。ほかの手段より一桁安く済みます。

ただし注意があります。社会保険料の滞納があると、審査は厳しくなります。

だからこそ、猶予の手続きを先に済ませる意味があります。分割納付の約束ができていれば、「放置している事業者」ではなくなるからです。

公的融資とは(公庫・制度融資・マル経)

どうしても間に合わないとき

取引先に出した請求書(売掛金)はありませんか。

あるなら、それを買い取ってもらう方法があります。入金日を待たずに現金にできます。

これは借入ではありません。審査で主に見られるのは、自社ではなく取引先の支払い能力です。滞納があっても使える場合があるのは、この仕組みによります。

ただし、正直に申し上げます。

手数料を払って作ったお金を、滞納の解消に充てるのは割の良い選択ではありません。

差押えが目前に迫っているなど、時間で追い詰められた場合の最後の手段です。まずは年金事務所への相談です。

仕組みと費用は、次のページで説明しています。

ファクタリングとは(仕組みの解説)

手数料を払って作ったお金を滞納に充てるかは、金額で判断します。

注意点:やってはいけないこと

追い詰められているときほど、危ない話が近づいてきます。

次の3つは避けてください。

  • 従業員から預かった保険料を、他の支払いに回し続ける——雇用の信頼に直結します
  • 「審査なし」「ブラックでもOK」をうたう業者——貸金業の登録がない違法な貸付のおそれがあります
  • 給与を買い取るという業者——個人の給与の買い取りは、貸金業に当たるとされています

給与の買い取りをうたう業者については、金融庁が注意喚起を出しています。

契約書のどこを見れば見分けられるか。次のページにまとめました。

違法な業者の見分け方を読む

条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。

今日やる一歩

このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。

管轄の年金事務所に電話をして、相談の予約を取ってください。

かかる時間は5分です。滞納額がまだ確定していなくても構いません。「相談したい」と伝えるだけで十分です。

督促状が届いている場合は、その封筒を見てください。管轄の年金事務所の電話番号が書かれています。手元にない場合は、日本年金機構のサイトから調べられます。

参考にした公的資料

このページは、資金調達と公的制度の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。制度の運用や条件は変わることがあります。実際のお手続きの前に、必ず年金事務所および各機関の公式の案内でご確認ください。

よくある質問

社会保険料を滞納すると、いつ差し押さえられますか?

時期は決まっていません。納期限を過ぎると督促状が届きます。それでも納めず、相談もしないままだと、財産の差押えに進みます。ただし、その前に年金事務所へ相談すれば、分割払いが認められる場合があります。日本年金機構は、換価の猶予が認められると財産の差押えや換価(売却)が猶予されると説明しています。

換価の猶予は、いつまでに申請すればよいですか?

納期限から6か月以内です。日本年金機構の案内にそう書かれています。この期限を過ぎると、申請による換価の猶予は使えなくなります。払えないと分かった時点で、早めに年金事務所へ相談してください。

猶予が認められると、どれくらいの期間で分割できますか?

1年以内です。日本年金機構の案内では、財産や収支の状況をふまえて、いちばん早く納め終わる期間が決められるとされています。あわせて、延滞金の一部が免除される場合もあります。

社会保険料の滞納があると、融資やファクタリングは使えなくなりますか?

銀行融資や公的融資は、滞納があると審査が厳しくなります。一方、売掛金を買い取ってもらうファクタリングは借入ではありません。審査で主に見られるのは取引先の支払い能力です。そのため、滞納があっても使える場合があります。ただし資金ができたら、必ず年金事務所へ相談して納めてください。

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