給料が払えないときの対処|遅配の前にやること
更新日: 2026-08-07
この記事でわかること
- 賃金はほかの支払いより優先すること、その法律上の理由
- 支払日までの日数別に、現金を作る方法
- 役員報酬を先に下げるときの税務上の注意点
- どうしても足りないときに、従業員へ伝える文面
- 二度目を起こさないための資金繰り表の作り方
目次
給料日が近いのに、口座の残高が足りない。経営者にとって、これほど眠れない状況はないと思います。このページは、支払日までに何を、どの順番でやるかを整理するためのものです。
最初に、賃金がほかの支払いとどう違うのかを法律の面から押さえます。次に、支払日までの日数別に現金を作る方法を並べます。そのあとで、どうしても足りない場合の伝え方を文例でお示しし、最後に二度目を起こさないための手当てに触れます。
まず結論:賃金はほかの支払いと同じに扱えない
順番を決めるうえで、最初に知っておいていただきたいことがあります。
労働基準法第24条は、賃金を毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないと定めています(出典: 労働基準法|e-Gov法令検索・2026年8月7日確認)。
仕入先への支払いであれば、事情を話して待ってもらう交渉ができます。しかし賃金は、支払日に支払わなければそれ自体が同条の違反になります。「まず仕入先に相談する」のと同じ感覚で、従業員に待ってもらうことはできません。
さらに、退職した労働者の未払い賃金については、賃金の支払の確保等に関する法律により、退職日の翌日から年14.6%の遅延利息がかかります。
つまり支払いの優先順位としては、賃金は他のどの支払いよりも先に確保するものと考えてください。仕入先への支払いを1か月待ってもらってでも、給料を先に払う。その順番が正解です。
では、実際にどう現金を作るか。残された日数で選べる手段が変わります。
比較:支払日までの日数別に現金を作る
まず全体を表で示します。上にあるものほど費用が安く、下にあるものほど早く現金になります。
| 支払日までの日数 | 打てる手 | 費用 |
|---|---|---|
| 2週間以上 | 公的融資/銀行への相談 | 年1〜3%程度 |
| 1週間 | 仕入先への支払い延期交渉/役員借入 | 原則ゼロ |
| 3〜5営業日 | 売掛金の資金化/事業者ローン | 1回1〜20%/年5〜18% |
| 1〜2営業日 | 売掛金の資金化(即日対応のところ) | 同上 |
| 当日 | 実質、打つ手はほぼ残らない | — |
3営業日を切ると選択肢が急に減ります。ここから、上から順に説明します。
まず、出ていくお金を止められないか
現金を増やす前に、出ていく予定を減らせないかを確認してください。費用がかからないぶん、いちばん効率が良い手です。
給料日の前後に出ていく支払いのうち、延ばせるものと延ばせないものを仕分けます。
- 延ばせる可能性があるもの——仕入先への支払い、外注費、リース料、家賃
- 延ばしにくいもの——賃金、社会保険料の納期限、手形の決済
仕入先への相談は、支払日の前に自分から連絡するのが鉄則です。切り出し方は次のページに文例つきでまとめています。
社会保険料については、年金事務所に申請できる猶予の制度があります。賃金を優先して保険料を後ろにずらす、という判断は制度上あり得ます。
役員報酬の見直し
従業員の賃金より先に見直す対象です。ただし1点だけ注意があります。
期中に役員報酬を減額すると、定期同額給与の要件を満たさなくなり、法人税の損金算入で不利になる場合があります。業績の著しい悪化など一定の事由があれば認められる余地もありますが、判断が分かれるところです。実行の前に必ず顧問税理士へご確認ください。
3〜5営業日ある場合:売掛金の資金化
ここが現実的な最後の手段になります。
取引先に出した請求書があるなら、それを買い取ってもらって入金日より前に現金化できます。借入ではないため、審査で主に見られるのは自社の決算ではなく、取引先の支払い能力です。赤字でも税金の滞納があっても使える場合があるのは、この構造によります。
申し込むときに必ず確認していただきたいのは、最終的な振込額が給与の総額に届くかどうかです。手数料の率が低くても、事務手数料などの諸費用が引かれて届かないのでは意味がありません。
費用は正直に申し上げます。手数料10%を入金まで30日の請求書に使えば、年利に直しておよそ120%相当です。今月をしのぐ手段であって、毎月使うものではありません。
売掛金がない場合は借入になります。仕組みは事業者ローンとはをご覧ください。
文例:どうしても足りないときの伝え方
すべて手を尽くして、それでも全額に届かない場合があります。ここで最も避けたいのは、何も言わないまま支払日を迎えることです。
伝えるときの原則は3つです。
- 支払日より前に、自分の口から伝える
- いつ、いくら払えるのかを具体的に示す
- 全額が無理でも、一部を支払日に出す
3番目が特に重要です。生活がかかっている以上、「全額を後日」より「一部を当日、残りを◯日後」のほうが従業員の負担は小さくなります。
伝え方の例です。
全員に集まってもらい、申し訳ない報告があります。今月の給与の支払いについてです。 大口の入金が◯月◯日にずれ込み、◯月◯日の支払日に全額をお渡しできない見込みとなりました。私の資金管理の責任です。 つきましては、支払日に◯割をお支払いし、残額を◯月◯日に必ずお支払いいたします。◯月◯日には◯◯社からの入金が確定しており、そこから充当します。 生活に直接関わることですので、事情がある方は個別に相談してください。可能な範囲で優先します。 二度目を起こさないため、◯◯と◯◯を見直します。
原因を自分の責任として言うこと、入金の裏づけを具体的に示すこと、再発防止に触れること。この3つが入っていれば、伝わり方は変わります。
個別の事情がある方——住宅ローンや保育料の引き落としが迫っている方には、優先して支払う配慮も検討してください。
手順:二度目を起こさない手当てをする
今月をしのげても、翌月に同じことが起きれば従業員は離れます。ここで手を打っておきます。
資金繰り表を給与日基準で作り直す
月末残高ではなく、給与支払日の前日残高を毎月チェックする形に変えてください。資金繰りが詰まるのは月末ではなく給与日です。
作り方は難しくありません。今後6か月について、給与日の前日時点で「入っている現金」と「その日までに出た現金」を並べるだけです。入金は確定しているものだけを書いてください。見込みを混ぜると精度が落ちます。
入金サイトを1社だけでも縮める
構造を変える打ち手です。取引額の大きい取引先から順に、締めの回数を月1回から月2回にできないか相談します。相手にとって支払総額は変わらないため、通りやすい交渉です。
時間があるうちに公的融資へ動く
金利は年1〜3%程度で、他の手段とは一桁違います。ただし申込から入金まで早くて2週間、通常は1か月前後かかります。苦しくなってからでは間に合わないため、今月を越えられたらすぐに動いてください。
仕組み:知っておきたい未払賃金立替払制度
万が一、事業の継続が難しくなった場合についても触れておきます。
未払賃金立替払制度があります。企業の倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、労働者健康安全機構が未払賃金の一部を事業主に代わって立替払いする制度です。対象となる要件や上限額が定められています。
これは従業員を守るための制度であり、経営者が資金繰りの手段として当てにするものではありません。ただし最悪の場合でも従業員が完全に無一文になるわけではないという事実は、判断を落ち着かせるうえで知っておく価値があります。
注意点:やってはいけないこと
追い詰められているときに限って、うまい話が寄ってきます。次のものには近づかないでください。
- 従業員に「立て替えてほしい」と頼む——労働基準法上の問題になります
- 給与から天引きして調整する——賃金全額払いの原則に反します
- 「審査なし」をうたう業者から借りる——貸金業の登録がない違法な貸付の可能性があります
- 従業員の給与債権を買い取るという業者を使う——給与の買い取りは貸金業に当たるとされています
給与の買い取りをうたう取引については、金融庁が注意喚起を出しています。契約前の見分け方は次のページをご覧ください。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたあと、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- 支払日まで3営業日以上——手元の請求書を集計し、資金化の見積もりを2社に依頼する
- 支払日まで1〜2営業日——支払予定の中から延ばせるものを外し、不足額を確定させる
- 不足が避けられない——伝える場を設定する。支払日を過ぎてからでは遅い
いちばんしてはいけないのは、何も決めないまま支払日を迎えることです。
参考にした公的資料
- 労働基準法|e-Gov法令検索——第24条(賃金の支払)(2026年8月7日確認)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」——実質的な貸付への注意(2026年8月7日確認)
- 国税庁「換価の猶予の申請手続」——換価の猶予・納税の猶予(2026年8月7日確認)
このページは資金調達と関連制度の判断材料をお伝えするものであり、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。役員報酬の変更や賃金の取り扱いについては、必ず顧問税理士および社会保険労務士へご確認ください。制度の内容は変わることがあります。
よくある質問
給料を遅らせると、法律上どうなりますか?
労働基準法第24条は、賃金を毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないと定めています。支払日に支払わなければ同条違反となります。また賃金の支払の確保等に関する法律により、退職した労働者の未払い賃金には退職日の翌日から年14.6%の遅延利息がかかります。在職中の従業員についても、遅配は労働契約上の債務不履行にあたります。
会社が倒産した場合、従業員の給料はどうなりますか?
未払賃金立替払制度があります。労働者健康安全機構が、企業の倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を事業主に代わって立替払いする制度です。対象や上限額が定められているため、詳細は同機構の案内をご確認ください。
役員報酬を先に下げるべきですか?
従業員の賃金より先に見直す対象です。ただし定期同額給与の要件を満たさない期中の減額は、法人税の損金算入で不利になる場合があります。実行の前に必ず顧問税理士へご確認ください。
給料日までに数日しかない場合、間に合う資金調達はありますか?
取引先に出した請求書があれば、買い取ってもらって入金日より前に現金化する方法があります。最短で数時間から数日です。借入ではないため、審査で主に見られるのは自社ではなく取引先の支払い能力です。ただし当日の申込では間に合わないことが多いため、支払日の3営業日前には動いてください。