ファクタリングの会計処理と消費税|仕訳と勘定科目の考え方
更新日: 2026-08-07
この記事でわかること
- 売掛金を譲渡したときの基本的な仕訳
- 手数料に使われる勘定科目の考え方
- 金銭債権の譲渡は消費税が非課税とされていること
- 借入との違いが決算書にどう表れるか
- 顧問税理士に確認すべき点
目次
売掛金を譲渡したとき、どう仕訳を切ればよいのか。
手数料に消費税はかかるのか。
このページでは、会計と税務の論点を整理します。
なお、個々の取引の処理は契約の内容によって変わります。最終的な判断は顧問税理士にご確認ください。
まず結論:借入ではないため、負債が増えません
これが会計上のいちばん大きな違いです。
| 手段 | 貸借対照表への影響 |
|---|---|
| 借入 | 負債が増える/現金が増える |
| 売掛金の譲渡 | 売掛金が減る/現金が増える |
売掛金という資産が現金に変わるだけで、負債は増えません。
自己資本比率などの指標に与える影響が、借入とは異なります。
仕組み:基本的な仕訳
実務でよく使われる形をお示しします。
売掛金を譲渡し、入金があったとき
売掛金100万円を、手数料10万円で譲渡した場合です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 900,000 | 売掛金 | 1,000,000 |
| 売上債権売却損 | 100,000 |
売掛金が消え、現金と費用が計上される形です。
売上は、もともと取引先への請求時に計上しています。ここで新たに売上は立ちません。
契約と入金の日がずれる場合
契約した日と入金の日が異なる場合、未収入金などを使って2段階で処理することがあります。
会社の会計方針によるため、顧問税理士と決めてください。
種類:手数料の勘定科目
実務では次のような科目が使われます。
- 売上債権売却損——最も一般的
- 債権売却損
- 支払手数料——ただし性質が違うため、区別する会社が多い
営業外費用として処理されることが多い項目です。
継続性が大切です
いちど決めた科目は、継続して使ってください。
年によって科目が変わると、決算書の比較ができなくなります。
金融機関も、前期との比較で数字を見ています。
条件:消費税の扱い
ここが最も質問の多い点です。
国税庁は、金銭債権の譲渡について非課税とされる取引として案内しています(参考: 国税庁「非課税となる取引」・2026年8月7日確認)。
売掛金は金銭債権にあたるため、その譲渡は非課税取引として扱われます。
確認していただきたいこと
ただし、個々の契約でどう扱うかは内容によります。
- 請求書や契約書に消費税の記載があるか
- 手数料以外の費用(事務手数料・登記費用など)はどう扱われているか
- 自社の消費税の申告で、どう区分するか
判断に迷う場合は、契約書を持って顧問税理士に相談してください。
注意点:決算書にどう表れるか
ここを経営者の方に知っておいていただきたいと思います。
売上債権売却損は、費用として利益を減らします。
毎月続けて使うと、この科目が積み上がります。
金融機関はここを見ています
決算書に売上債権売却損が大きく計上されていると、次のように読まれます。
- 資金繰りが厳しい状態が続いている
- 銀行から借りられない事情があるのではないか
- 利益が手数料に消えている
つまり、次の融資の審査で不利に働くことがあります。
だから「一時的に使い、その間に安い手段へ移る」という順番が大切になります。
比較:先に検討すべき手段
会計と税務の話をしてきましたが、最も安い手段から検討する原則は変わりません。
1. 支払条件の交渉(費用ゼロ)
2. 公的融資(年1〜3%程度)
日本政策金融公庫の一般貸付を使います。運転資金の融資限度額は4,800万円、返済期間は5年以内(特に必要な場合7年以内)です。
出典は日本政策金融公庫「一般貸付」です(2026年8月7日確認)。
3. 売掛金の資金化
間に合わないときの手段です。
注意点:契約の中身で処理が変わります
契約書に返済・利息・担保・保証人といった言葉が入っている場合、それは債権の売買ではありません。
実質的に貸付であれば、会計上も税務上も借入として扱うべきものになります。
金融庁も、実質的な貸付にあたるものについて注意喚起を出しています。
処理を決める前に、契約書の性質を確認してください。
手順:金融機関に説明するときの言い方
決算書に売上債権売却損が計上されている場合、聞かれる前に説明してください。
黙っていると、悪いほうに解釈されます。
説明の型
前期に売上債権売却損が◯◯円計上されております。◯月に◯◯社への納品が集中し、入金までの間に資材の支払いが重なったためです。今期は◯月に◯◯を実施し、同じ状況が起きないよう手当てしております。
3つの要素を入れてください。
- なぜ使ったか——原因を1つに絞る
- 一時的なものか——継続していないことを示す
- 何を改善したか——同じことが起きない理由
「資金繰りが苦しかったので」だけでは、判断材料になりません。
条件:継続して使っている場合
毎月使っている場合、決算書では明確に見えます。
年間の手数料を合計してください。
月の手数料 × 12か月 = 年間の負担
この額が、公的融資の年間の利息と比べてどうかを計算してください。
たとえば月10万円の手数料なら、年間120万円です。1,000万円を年3%で借りた場合の利息は年30万円です。
4倍の差があります。
この計算を1度でもすると、優先順位が変わるはずです。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- すでに利用した——契約書と請求書を持って、顧問税理士に処理を相談する
- これから利用する——契約書に返済・利息・担保・保証人の記載がないか確認する
- 毎月使っている——年間の手数料を合計し、公庫への相談を始める
決算書に残る数字は、次の融資の判断材料になります。
参考にした公的資料
- 国税庁「非課税となる取引」——金銭債権の譲渡の扱い(2026年8月7日確認)
- 日本政策金融公庫「一般貸付」——運転資金4,800万円・5年以内(2026年8月7日確認)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」——実質的な貸付への注意(2026年8月7日確認)
このページは、会計・税務の一般的な考え方をお伝えするものです。個別の税務判断を行うものではなく、特定のサービスの利用を勧めるものでもありません。仕訳・勘定科目・消費税の区分は、契約の内容と会社の会計方針によって変わります。必ず顧問税理士にご確認ください。
このページは、資金調達の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。条件や制度は変わることがあります。実際のお申し込みの前に、各社・各機関の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
ファクタリングの手数料に消費税はかかりますか?
国税庁は、金銭債権の譲渡について非課税とされる取引として案内しています。売掛金の譲渡そのものは非課税取引です。ただし個々の契約でどう扱うかは内容によるため、請求書や契約書の記載を確認し、顧問税理士にご相談ください。
手数料はどの勘定科目で処理しますか?
実務では売上債権売却損などの科目が使われます。営業外費用として処理されることが多い項目です。ただし科目の選び方は会社の会計方針にもよるため、顧問税理士と決めてください。継続して同じ科目を使うことが大切です。
借入とは決算書上どう違いますか?
借入は負債として貸借対照表に計上されますが、売掛金の譲渡は売掛金が減って現金が増える形になります。負債が増えないため、自己資本比率などの指標に与える影響が異なります。これが借入とは違う点として挙げられる理由です。
手数料が大きいと決算にどう表れますか?
売上債権売却損として費用に計上されるため、利益が減ります。毎月続けて使うと、この費用が積み上がって営業外費用が膨らみます。決算書を見た金融機関は、この科目の金額から資金繰りの状態を読み取ります。