消費税が払えないとき|分割にする申請と6か月の期限
更新日: 2026-08-21
この記事でわかること
- 消費税は預かったお金であり、使ってしまうと払えなくなること
- 中間申告が年1回・3回・11回のどれになるかは、前年の税額で決まること
- 税務署に申請すれば分割払いにでき、差押えも止まること
- 延滞税は2か月を境に年2.8%から年9.1%に上がること
- 来期に同じことを起こさないための、別口座での管理
目次
消費税の納付書を見て、手が止まったかもしれません。売上のときに受け取っていたはずのお金が、手元に残っていない。
このページでは、差押えを止めるために、何をどの順番でやるかを説明します。
最初に、なぜ払えなくなるのかを仕組みから説明します。次に、中間申告が年に何度も来る理由を確認します。そのあと、税務署への相談の進め方をお示しします。最後に、来期に同じことを起こさない方法に触れます。
仕組み:なぜ消費税だけ払えなくなるのか
法人税や所得税は、利益が出たときにかかります。赤字なら発生しません。
消費税は違います。赤字でも発生します。
理由は簡単です。消費税は、あなたの利益にかかる税金ではありません。お客様から預かったお金を、代わりに納めているだけです。
商品を1万1,000円で売ったとき、1万円が売上で、1,000円は預かった消費税です。この1,000円は最初から自社のお金ではありません。
ところが通帳では区別がつきません。入金は1万1,000円としてまとめて入ります。
資金繰りが苦しいとき、その1,000円は仕入や給与に回ります。悪意はありません。通帳の残高を見て「まだある」と判断しただけです。
そして納期限が来ます。使ってしまった分は、もう手元にありません。
これが、消費税だけが払えなくなる仕組みです。
時間:中間申告で年に何度も来る
もう1つ、資金繰りを崩す原因があります。中間申告です。
消費税は、年に1回だけ払うとは限りません。前の年の税額によって、支払う回数が変わります。
| 前の課税期間の消費税額(国税部分) | 中間申告の回数 |
|---|---|
| 48万円以下 | 原則として不要 |
| 48万円超 400万円以下 | 年1回 |
| 400万円超 4,800万円以下 | 年3回 |
| 4,800万円超 | 年11回 |
(出典: 国税庁「No.6609 中間申告の方法」・2026年8月7日確認)
ここに落とし穴があります。
売上が伸びた年の翌年は、中間申告の回数が増えます。年1回だったものが年3回になる、ということが起こります。
売上が伸びているので、経営者の実感としては調子が良いはずです。しかし納付の回数は先に増えます。好調の翌年に資金繰りが詰まるのは、この仕組みによります。
費用:放置するといくら増えるか
先に、待っていても状況が良くならないことを数字で確認します。
延滞税の割合は、国税庁が毎年公表しています。令和8年1月1日から令和8年12月31日までは、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%です。それ以後は年9.1%になります(出典: 国税庁「延滞税の割合」・2026年8月7日確認)。
2か月を境に、負担が3倍以上に跳ね上がります。
つまり、動くなら早いほうが安く済みます。
手順:税務署へ相談する
では、実際にどうするか。
国税を一時に納付することが困難な場合には、猶予の制度があります。換価の猶予が認められると、分割での納付が可能になります。財産の差押えや換価も猶予されます(出典: 国税庁「換価の猶予の申請手続」・2026年8月7日確認)。
制度:換価の猶予の要件と期限
ここでいちばん大事なのは、申請に期限があることです。
換価の猶予の申請は、納付すべき国税の納期限から6か月以内に出す必要があります(出典: 国税庁「換価の猶予の申請手続」・2026年8月20日確認)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 国税徴収法第151条の2 |
| 要件 | 下記の5つをすべて満たすこと |
| 提出期限 | 納期限から6か月以内 |
| 提出先 | 徴収を担当する国税局または税務署 |
| 提出方法 | e-Tax、または書面(持参・郵送・時間外収受箱) |
| 猶予期間 | 原則1年以内(延長で最長2年) |
| 不許可のとき | 国税通則法第75条により不服申立てができる |
6か月を過ぎると、この申請はできません。督促状が来てから慌てるより、納期限の前後で動いたほうが選択肢が残ります。
満たすべき5つの要件
- 一時に納付することで事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあること
- 納税について誠実な意思を有すると認められること
- ほかの国税の滞納がないこと
- 納期限から6か月以内に申請書を提出していること
- 原則として担保の提供があること(100万円以下、または猶予期間3か月以内なら不要)
3つ目を見落とすと、申請しても通りません。ほかの税目も滞納しているなら、窓口でまとめて相談してください。
猶予が認められると延滞税が軽くなります
猶予期間中の延滞税は、全部または一部が免除されます(出典: 国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」・2026年8月21日確認)。
差押えが止まるだけでなく、負担額そのものが軽くなります。申請しないまま放置して得になることはありません。
条件:添付する書類は金額で変わります
申請書のほかに添える書類は、猶予を受けようとする金額で分かれます。
| 猶予を受ける額 | 添付するもの |
|---|---|
| 100万円以下 | 財産収支状況書 |
| 100万円超 | 財産目録と収支の明細書(財産収支状況書に代えて) |
このほかに担保提供書を求められることがあります。様式はすべて国税庁のページからExcelとPDFで配布されており、記載例も公開されています。
書類の名前を知っているだけで、窓口での話が変わります。「財産収支状況書は持ってきました」と言えれば、そこから先に進めます。
電話での言い方
そのまま使える言葉でお示しします。
◯◯株式会社の◯◯と申します。消費税の納付についてご相談させてください。一括での納付が難しい見込みですので、分割での納付をご相談したく、お電話いたしました。伺う日をいただけますでしょうか。
大事なのは伝え方です。
「払わない」ではなく、「払う意思はあるが、一括が難しい」と伝えてください。制度の目的が、納める意思のある事業者を支えることにあるからです。
窓口では、金額を自分から出す
納付すべき額は◯◯円です。毎月◯◯円であれば、確実にお納めできます。◯月に◯◯社からの入金が◯◯円ございますので、その月は上乗せいたします。資金繰り表をお持ちしました。
「毎月いくらなら払えるか」を自分から言えると、話が一度で進みます。
「できるだけ払います」と答えると、相手は判断できません。その場では結論が出ず、また出直しになります。
持っていくもの
- 直近の決算書(できれば2期分)
- 直近の試算表
- 今後6か月ぶんの資金繰り表
- 預金通帳の直近の記帳分
- 納付書または納付すべき額が分かる資料
資金繰り表は手元にないことが多いと思います。先に作ってください。
作り方は簡単です。今後6か月について、入るお金と出るお金を月ごとに並べます。そして月末に残る額を計算します。
コツが1つあります。入るお金は、確定しているものだけを書いてください。
比較:納付する資金をどう作るか
相談と並行して、初回の納付分が要ります。安い順に当たります。
まず、借りずに済ませられないか
仕入先への支払いを1か月待ってもらう方法があります。銀行への返済を一時的に減らしてもらう方法もあります。
どちらも費用はかかりません。
2週間以上あるなら、公的融資
金利は年1〜3%程度です。ほかの手段より一桁安く済みます。
ただし滞納があると審査は厳しくなります。だからこそ、猶予の手続きを先に済ませる意味があります。
どうしても間に合わないとき
取引先に出した請求書はありませんか。
あるなら、買い取ってもらって入金日より前に現金にできます。借入ではないため、審査で主に見られるのは自社ではなく取引先の支払い能力です。
正直に申し上げます。
手数料を払って作ったお金を、税金に充てるのは割の良い選択ではありません。差押えが迫っているなど、時間で追い詰められた場合の最後の手段です。
注意点:来期に同じことを起こさない
今回をしのいでも、来期また納期限が来ます。ここで仕組みを変えます。
預かった分を別口座に移す
いちばん効く方法です。
月末に、その月に預かった消費税の見込み額を、別の口座へ移してください。
正確な計算は要りません。売上の消費税から仕入の消費税を引いた、おおよその額で十分です。
この口座からは絶対に引き出さないと決めてください。手を出せる場所に置くと、意味がなくなります。
中間申告の予定を先に書き込む
資金繰り表に、中間申告の納付予定額をあらかじめ記入してください。
回数は前年の税額で決まっているので、年の初めに分かります。半年先の支出として見えていれば、そこに向けて手を打てます。
売上が伸びた年は、翌年に備える
好調な年ほど、翌年の中間申告の回数が増えます。売上が伸びた年の決算のときに、翌年の納付回数を顧問税理士に確認してください。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- 納期限が過ぎている——所轄の税務署に電話し、相談の予約を取る
- 今回は間に合う——次の中間申告の額と時期を確認し、資金繰り表に書き込む
- 再発を防ぎたい——別口座を1つ作り、今月末から預かり分を移す
3つ目を今日始めれば、来期のこの日は何も起きません。
参考にした公的資料
- 国税庁「No.6609 中間申告の方法」——中間申告の回数と基準額(2026年8月7日確認)
- 国税庁「延滞税の割合」——令和8年の割合(年2.8%/年9.1%)(2026年8月7日確認)
- 国税庁「換価の猶予の申請手続」——換価の猶予・納税の猶予(2026年8月7日確認)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」——実質的な貸付への注意(2026年8月7日確認)
このページは、資金調達と公的制度の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。税額の計算や猶予制度の適用については、必ず所轄の税務署または顧問税理士へご確認ください。制度の内容は変わることがあります。
よくある質問
消費税を払えないと、どうなりますか?
納期限を過ぎると延滞税がかかります。督促状が届き、それでも納めず相談もしないままだと、財産の差押えに進みます。ただし一時に納付することが困難な場合には、換価の猶予や納税の猶予といった制度があります。認められると分割での納付が可能になり、財産の差押えや換価が猶予されます。
中間申告は年に何回ありますか?
前の課税期間の消費税額(国税部分)で決まります。国税庁の案内では、48万円超400万円以下は年1回、400万円超4,800万円以下は年3回、4,800万円超は年11回とされています。48万円以下の場合は原則として中間申告は不要です。
延滞税はどれくらいかかりますか?
国税庁が公表している令和8年1月1日から令和8年12月31日までの割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。2か月を境に大きく上がります。
消費税は分割で払えますか?
換価の猶予が認められれば、分割での納付が可能になります。根拠は国税徴収法第151条の2で、一時に納付することにより事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがある場合が対象です。あわせて財産の差押えや換価も猶予されます。
分割の申請に期限はありますか?
あります。換価の猶予の申請は、納付すべき国税の納期限から6か月以内に提出する必要があります。この期間を過ぎると申請できません。督促状を待たず、納期限の前後で動いてください。
分割を申請するとき、何を用意しますか?
換価の猶予申請書に加え、財産収支状況書を添えます。猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合は、財産収支状況書に代えて財産目録と収支の明細書を提出します。担保提供書を求められることもあります。様式と記載例は国税庁のページで配布されています。
分割にするときの注意点は何ですか?
猶予が認められると、猶予期間中の延滞税は全部または一部が免除されます。ただし毎月の納付額を守れないと猶予が取り消されることがあるため、無理のない金額で申請してください。またほかの国税に滞納があると換価の猶予は認められません。申請が不許可となった場合は、国税通則法第75条により不服申立てができます。
消費税の滞納があると、融資は受けられませんか?
銀行融資や公的融資では、滞納があると審査は厳しくなります。一方、売掛金を買い取ってもらうファクタリングは借入ではありません。審査で主に見られるのは取引先の支払い能力のため、滞納があっても使える場合があります。ただし資金ができたら、必ず税務署へ相談して納めてください。