フリーランスの資金繰り|報酬の支払期日は法律で決まる
更新日: 2026-08-14
この記事でわかること
- 報酬の支払期日は、給付を受領した日から起算して60日以内と法律で定められていること
- 支払期日を決めないまま発注された場合、受領した日が支払期日とみなされること
- 従業員を使っていない個人なら、資本金の大小に関わらず対象になること
- 発注元へ支払いを確かめるときに、そのまま使える3つの文面
- 無担保・無保証人で年2.70%のマル経融資という選択肢
目次
まず結論:支払期日は「受領から60日以内」と法律で決まっている
入金が遅いのは、あなたの交渉が下手だからではありません。
フリーランスの報酬には、支払期日の上限を定めた法律があります。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。通称はフリーランス法、またはフリーランス・事業者間取引適正化等法といいます。令和5年4月28日に成立し、同年5月12日に公布され、令和6年11月1日に施行されました。
同法第4条第1項は、報酬の支払期日についてこう定めています。給付を受領した日から起算して60日の期間内において、かつできる限り短い期間内に定めなければならない。
しかも、検査をするかどうかは問わないと条文に明記されています。「検収が終わっていないので支払えない」という説明は、60日を超える理由にはなりません。
だから資金繰りの立て直しは、この期日を確かめるところから始まります。まず自分の取引が対象かどうかを見て、次に期日がいつなのかを固定する。順番を逆にすると、交渉の材料を持たないまま催促することになります。
条件:自分がフリーランス法の対象かを確かめる
この法律が守るのは「特定受託事業者」です。
同法第2条第1項は、これを2つの型で定義しています。1つは個人であって、従業員を使用しないもの。もう1つは法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないものです。
注目したいのは、資本金の額や売上の大きさが要件に入っていないことです。
長く使われてきた下請法は、発注側と受注側の資本金の組み合わせで適用が決まります。フリーランス法はそこが違います。人を雇わずに一人で受託しているなら、屋号があってもなくても、開業して1年目でも対象に当たります。
一人法人にした方も同じです。代表者のほかに役員がおらず、従業員も使っていなければ、法人であっても特定受託事業者に含まれます。
反対に、アルバイトを1人でも雇っていれば「従業員を使用しないもの」には当たりません。自分がどちらなのかは、契約書ではなく実際に人を使っているかで決まります。
仕組み:期日を決めなかったらどうなるか
ここが、この法律のいちばん実務的な部分です。
発注のときに支払期日を決めていなかった。フリーランスの現場ではよくあることです。口頭で頼まれ、納品して、それから請求書を出す。支払時期の話は最後まで出てこない。
同法第4条第2項は、その場合の扱いを書いています。支払期日が定められなかったときは、給付を受領した日が支払期日と定められたものとみなす。つまり納めた日が期日になります。
さらに、60日ルールに違反する期日を定めた場合も救済されます。この場合は、受領した日から起算して60日を経過する日が支払期日とみなされます。「うちは翌々月末払いです」と後から言われても、みなしの期日は動きません。
そもそも期日は、決めて伝えるべきものです。
同法第3条第1項は、業務委託をした場合、直ちに給付の内容・報酬の額・支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により明示しなければならないと定めています。メールやチャットでの明示も電磁的方法に含まれます。内容が決まらないことに正当な理由がある事項は例外ですが、決まった後は直ちに明示しなければなりません。
もう1つ、覚えておくと得をする規定があります。再委託の場合です。他の事業者から受けた業務をあなたに再委託したケースでは、同条第3項により元委託支払期日から起算して30日以内に支払期日を定めることになります。「元請から入金されたら払う」という説明にも、期限の枠がかかります。
手順:支払期日が守られないときの動き方
順番は3つです。焦って最後から始めないでください。
1つ目は、期日の確定です。いつ納めたのか、受領された日はいつか、支払期日は明示されていたか。この3点をメールやチャットの履歴から拾い、日付を書き出します。明示がなければ、前の節のみなし規定が使えます。
2つ目は、書面での確認です。電話ではなくメールを使ってください。あとで経緯を示せる形にしておくためです。文例は次の節に置きました。
3つ目が、外部への相談です。厚生労働省は「フリーランス・トラブル110番」という相談窓口を設けています。
行政の側にも手段があります。同法第8条により、公正取引委員会は違反があると認めるときは勧告することができます。勧告に従わなかったときは、第9条第1項により命令ができます。そして命令をした場合には、その旨を公表することができると第9条第2項に書かれています。命令に違反すれば、第24条により50万円以下の罰金の対象です。第25条には、法人にも罰金刑を科す両罰規定が置かれています。
これらを交渉で振りかざす必要はありません。ただ、後ろ盾があると分かっているだけで、聞き方は落ち着きます。
文例:発注元に支払いを確かめる
責める文面は使いません。事実と日付だけを並べます。
期日が明示されていなかったとき
お世話になっております。◯月◯日に納品した◯◯の件でご連絡しました。発注時に支払期日のご案内をいただいていなかったため、確認させてください。フリーランス法では、支払期日を定めていない場合、給付を受領した日が支払期日とみなされることになっています。恐れ入りますが、お支払いの予定日をお知らせいただけますでしょうか。
期日を過ぎているとき
◯月◯日付でご請求した◯◯の件です。お支払い予定日を◯月◯日と伺っておりましたが、本日時点で入金の確認が取れておりません。行き違いでしたら申し訳ありません。処理の状況をお知らせいただけると助かります。
60日を超える期日を提示されたとき
ご提示いただいた支払条件について1点だけ確認させてください。フリーランス法では、報酬の支払期日は給付を受領した日から起算して60日以内に定めることとされています。恐れ入りますが、支払期日のご調整をお願いできますでしょうか。
3つとも、相手の落ち度を断定していません。担当者の手元で止まっているだけ、ということも実際によくあります。
同じ相手との取引が続いているなら、契約の打ち切りにも予告のルールがあります。同法第16条第1項は、継続的業務委託の契約を解除する場合、契約期間の満了後に更新しない場合も含めて、少なくとも30日前までに予告しなければならないと定めています。
比較:入金までの日数別に取れる手
期日が分かったら、次は穴の埋め方です。残りの日数で選択肢が変わります。
今日・明日に必要な場合。融資は間に合いません。現実的なのは、売掛金や請求書を先に資金化する方法です。個人向けのサービスは少額から使えるものがあります。詳しくは個人事業主のファクタリング比較にまとめました。金融庁はファクタリングについて注意喚起を公表しています。契約の形と費用は、必ず自分で確かめてください。
3日から1週間ある場合。支払いの側をずらす交渉が効きます。家賃、外注費、税金。優先順位を決めて、待ってもらえるものから相談します。
2週間以上ある場合。公的融資が視野に入ります。次の節で扱います。
なお、入金の遅れが常態化しているなら、原因は資金調達ではなく取引条件の側にあります。その見直し方は売掛金の入金が遅いときの対処に分けました。建設現場で一人で請けている方は、適用される法律が変わります。一人親方の資金繰りを先に読んでください。
費用:無担保・無保証人で借りられる公的融資
一人でやっていると、担保も保証人も出せません。
マル経融資は、そこを想定した制度です。正式には「小規模事業者経営改善資金」といい、日本政策金融公庫が扱っています。
対象は、商工会議所・商工会・都道府県商工会連合会の経営指導を受けている小規模事業者で、商工業者に限られます。加えて商工会議所等の長の推薦が必要です。
条件を並べます。融資限度額は2,000万円。返済期間は10年以内で、うち据置期間は2年以内。そして担保・保証人は無担保・無保証人です。利率は特別利率Fが適用され、令和8年8月3日現在で年2.70%となっています。
ただし公庫は「審査の結果、お客さまのご希望に沿えないことがございます」と明記しています。推薦を受ければ通る制度ではありません。
推薦までに時間がかかる点も、先に知っておいてください。経営指導が前提になっているため、今日申し込んで今日借りられる制度ではありません。資金が必要になる前に、商工会議所へ相談しておくのが本来の使い方です。
法人化した場合との違いや、ほかの選択肢を並べて見たいときは個人事業主・フリーランスが使える資金調達を参照してください。
注意点:契約のときに必ず残しておくもの
次の入金待ちを短くするのは、今回の交渉ではありません。次の契約の結び方です。
明示された条件を、消えない形で保存してください。チャットツールの履歴は、プラン変更や退会で見られなくなることがあります。受け取ったその日に、PDFやスクリーンショットで手元に残します。
第5条第1項も知っておくと役に立ちます。政令で定める期間以上の業務委託について、次の行為が禁止されています。
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の受領を拒むこと
- 同じく、報酬の額を減ずること
- 同じく、給付を受領した後、その給付に係る物を引き取らせること
- 同種または類似の給付に通常支払われる対価に比し、著しく低い報酬の額を不当に定めること
「納品後の値引き」も「一方的な受け取り拒否」も、条文に名指しで書かれています。
もう1つ。売上の入る口座と生活費の口座を分けてください。制度の話ではありませんが、一人で回している以上、通帳を見て残りが分かる状態が資金繰りの基本になります。
金曜の夕方に気づいた場合の動き方は土日祝でも資金調達する方法にまとめてあります。
今日やる一歩
紙を1枚出して、案件ごとに3つの日付を書いてください。
納品した日、先方が受領した日、明示された支払期日。3つ目が空欄なら、そこには受領した日を書き入れます。第4条第2項のみなし規定が働くからです。
書き出したら、期日を過ぎている案件だけを選びます。そのうえで、前の節の文例をコピーしてメールを1通送ってください。今日動かすのは、いちばん古い1件だけで構いません。
同時に、来月の支払いを紙の右側に並べます。入る日と出る日を突き合わせて、足りない金額と足りない日を出す。ここまでできれば、相談先を選ぶ材料はそろいます。
参考にした公的資料
- 公正取引委員会「フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組」(2026-08-14確認)
- e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(2026-08-14確認)
- 厚生労働省「フリーランス・トラブル110番」(2026-08-14確認)
- 日本政策金融公庫「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」(2026-08-14確認)
- 日本政策金融公庫「金利情報」(2026-08-14確認)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」(2026-08-14確認)
本記事は制度の解説を目的としたもので、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。
よくある質問
フリーランスの報酬の支払期日は、法律で決まっていますか?
決まっています。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)第4条第1項は、報酬の支払期日について、給付の内容を検査するかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して60日の期間内で、かつできる限り短い期間内に定めなければならないと規定しています。この法律は令和6年11月1日に施行されました。
契約で支払期日を決めないまま仕事を納めてしまいました。どうなりますか?
フリーランス法第4条第2項により、支払期日が定められなかったときは、発注者が給付を受領した日が支払期日と定められたものとみなされます。また60日ルールに違反する期日が定められたときは、受領した日から起算して60日を経過する日が支払期日とみなされます。期日を決めていなくても、支払いを求める根拠は残ります。
自分がフリーランス法の対象かどうかは、どう判断しますか?
同法第2条第1項は「特定受託事業者」を、従業員を使用しない個人、または一の代表者以外に役員がなく従業員も使用しない法人と定義しています。資本金の額や売上の大きさは要件になっていません。人を雇わずに一人で受託しているなら、屋号があってもなくても対象に当たります。
支払ってもらえないとき、どこに相談できますか?
厚生労働省が「フリーランス・トラブル110番」という相談窓口を設けています。あわせて公正取引委員会は、違反があると認めるときは勧告することができ、勧告に従わない場合は命令ができます。命令をしたときはその旨を公表することができるとされ、命令に違反した場合は50万円以下の罰金の対象になります。