法人が使える資金調達|経営者保証を外せる制度を知っておく
更新日: 2026-08-07
この記事でわかること
- 法人は調達の選択肢と金額の幅が広いこと
- 経営者保証に関するガイドラインの3要件
- 保証料率の上乗せで経営者保証を外せる制度があること
- 決算書2期分と試算表が判断材料になること
- 金額帯ごとにどこへ当たるべきか
目次
法人だから選択肢は多いはずだ。それなのに、どこから当たればよいのか分からない。
このページでは、法人が使える手段を整理し、とくに代表者の個人保証をめぐる選択肢をお伝えします。
最初に個人事業主との違いを確認します。次に金額帯ごとの当たり先を示し、そのあと経営者保証の話に入ります。
まず結論:違いは3つです
法人と個人事業主で、何が違うのか。
| 項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 判断材料 | 確定申告書 | 決算書(2期分) |
| 金額の幅 | 小さくなりやすい | 広い |
| 銀行・保証協会 | 使いにくいことがある | 使いやすい |
| 代表者の保証 | 論点にならない | 論点になる |
いちばん下が、法人特有の論点です。
会社の借入に、代表者が個人として保証を求められることがあります。会社が返せなくなったとき、個人の財産で返すという約束です。
比較:金額帯ごとの当たり先
必要な額によって、当たるべき先が変わります。
| 必要な額 | 当たり先 |
|---|---|
| 〜500万円 | マル経融資・公庫の一般貸付 |
| 500万〜3,000万円 | 公庫・制度融資・信用保証付き融資 |
| 3,000万円〜 | 銀行のプロパー融資・制度融資 |
| 急ぐ場合 | 売掛金の資金化 |
金額が大きいほど、時間もかかります。
いま必要な額が決まっているなら、そこから逆算して当たり先を決めてください。
仕組み:経営者保証を外すという選択
ここが、多くの経営者が知らない部分です。
「経営者保証に関するガイドライン」という自主的なルールがあります。
保証なしで融資を受けるための要件として、次の3つが挙げられています。
- 法人と個人の資産の分離——会社の金と個人の金を混ぜない
- 財務基盤の強化——返済能力があること
- 経営の透明性の確保——数字をきちんと出していること
(出典: 中小企業庁「経営者保証」・2026年8月7日確認)
1つ目がいちばん見られます
法人と個人の資産の分離は、中小企業でとくに問題になりやすい点です。
- 会社の口座から個人の支出をしていないか
- 役員貸付金が積み上がっていないか
- 会社名義の資産を個人が使っていないか
役員貸付金が大きいと、この要件で引っかかります。
逆に言えば、ここを整理するだけで保証を外せる可能性が生まれます。
条件:保証料率の上乗せという選択肢
3要件を完全には満たしていない場合の話です。
2024年3月から、保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度が始まっています(出典: 中小企業庁の案内・2026年8月7日確認)。
保証料を多めに払うことで、代表者の個人保証を外すという選択です。
これは、事業と個人の生活を切り離したい経営者にとって大きな意味を持ちます。
金融庁も経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策として情報を公表しています(2026年8月7日確認)。
取引のある金融機関と信用保証協会に、まず聞いてみてください。
当社の借入について、経営者保証を外す形をご検討いただくことは可能でしょうか。保証料率の上乗せによる方法も含めて、ご相談させていただきたく存じます。
手順:相談に持っていくもの
法人が融資を相談するときに、そろえるものです。
- 決算書(直近2期分、できれば3期分)
- 直近の試算表——決算後の動きを示す
- 今後6か月の資金繰り表——返済能力の説明材料
- 借入の一覧——借入先・残高・毎月の返済額・保証の有無
- 受注が分かる資料——契約書・注文書
2つ目と3つ目がとくに効きます。
決算書は年に1回です。そのあと数字がどう動いたかを示せるのが試算表です。
赤字の決算を出したあとに改善しているなら、試算表がその証拠になります。
比較:急ぐときの手段
融資が間に合わない場合です。
売掛金の資金化は、借入ではありません。
審査で主に見られるのは自社の決算ではなく、取引先の支払い能力です。
つまり自社が赤字でも、取引先がしっかりした会社であれば通ることがあります。
ただし費用は重くなります。手数料10%を入金まで30日の請求書に使えば、年利に直しておよそ120%相当です(目安)。
注意点:気をつけること
- 役員貸付金を放置する——経営者保証を外す要件で不利になります
- 複数の金融機関に同時に申し込む——情報は共有されます。順番に相談してください
- 保証を外す話を切り出さない——聞かなければ、そのままの条件で進みます
契約書に返済・利息・担保・保証人といった言葉が入っている場合、それは債権の売買ではなく貸付です。金融庁も注意喚起を出しています。
種類:法人だから使える手段
個人事業主にはない選択肢を挙げます。
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会が保証することで、金融機関から借りやすくなる仕組みです。
実績の少ない会社や、担保のない会社でも使える道が開けます。
保証料がかかりますが、金利と合わせても年2〜3%程度に収まることが多い水準です。
相談先は、取引のある金融機関か、各都道府県の信用保証協会です。
自治体の制度融資
都道府県や市区町村が、金融機関・信用保証協会と連携して行う融資です。
利子や保証料の一部を自治体が補助する形が多く、条件は民間より有利になります。
自治体によって内容がまったく違うため、まず本社のある自治体の窓口で確認してください。
経営セーフティ共済
取引先の倒産に備える公的な共済です。掛金を損金に算入しながら、万一に備えられます。
手順:法人が陥りやすい落とし穴
最後に、注意していただきたい点を整理します。
役員報酬を高く設定したまま資金繰りが苦しくなるケースです。
役員報酬は原則として期中に減らせません。
決算のたびに、次の1年で払える額かどうかを確認してください。高すぎる設定は、赤字と資金不足を同時に招きます。
逆に、役員報酬が高いために赤字になっているなら、それは金融機関への説明材料になります。「報酬を下げれば黒字です」と言えるからです。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- まだ数か月は持つ——取引銀行に電話し、経営者保証を外す相談を切り出す
- 役員貸付金が大きい——顧問税理士に、解消の方法を相談する
- 今月が厳しい——請求済みの額を集計し、見積もりを2社に依頼する
個人保証を外せるかどうかは、聞かなければ分かりません。まず聞いてください。
参考にした公的資料
- 中小企業庁「経営者保証」——ガイドラインの3要件・経営者保証改革プログラム(2026年8月7日確認)
- 中小企業庁の案内——保証料率の上乗せで経営者保証を外せる制度(2026年8月7日確認)
- 金融庁「経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策等について」——参考事例(2026年8月7日確認)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」——実質的な貸付への注意(2026年8月7日確認)
このページは、資金調達の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。経営者保証の取扱いは、金融機関ごとの判断と個別の事情によって決まります。取引のある金融機関・信用保証協会へご確認ください。
よくある質問
代表者の個人保証を外すことはできますか?
できる場合があります。経営者保証に関するガイドラインでは、保証なしで融資を受けるための要件として、法人と個人の資産の分離、財務基盤の強化、経営の透明性の確保が挙げられています。加えて2024年3月からは、保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度も始まっています。
要件を全部満たしていないと無理ですか?
保証料率の上乗せを選ぶ制度は、ガイドラインの要件を完全には満たしていない事業者でも、経営者保証を提供しないことを選択できる仕組みとして案内されています。詳しい条件は中小企業庁の資料と、取引のある金融機関・信用保証協会でご確認ください。
法人と個人事業主で何が違いますか?
判断材料が決算書になること、調達できる金額の幅が広いこと、銀行や信用保証協会という選択肢が使いやすいことです。一方で、代表者の個人保証を求められる場面があるという点は、法人特有の論点になります。
赤字の法人でも相談できますか?
相談できます。日本政策金融公庫は赤字の事業者からの相談にも応じています。重要なのは赤字の原因を説明でき、いつ戻すかを数字で示せるかどうかです。直近の試算表と資金繰り表を用意してください。