赤字でも使える資金調達|決算書を見る手段と見ない手段
更新日: 2026-08-07
この記事でわかること
- 資金調達は「決算書を見る手段」と「見ない手段」に分かれること
- 赤字でも公的融資は相談できること
- 売掛金の資金化は、自社ではなく取引先の支払い能力を見ること
- 赤字の種類によって、通りやすさが変わること
- どこから当たるべきかの順番
目次
決算が赤字だった。銀行に相談したら、良い返事がもらえなかった。
このページでは、赤字でも使える手段はどれかを、仕組みから整理します。
最初に、資金調達が2種類に分かれることをお伝えします。次に、赤字の中身によって判断が変わることを説明します。そのあと、どこから当たるべきかを費用の安い順に並べます。
まず結論:手段は2種類に分かれます
赤字のときに考えるべきことは、実は単純です。
資金調達には「決算書を見る手段」と「見ない手段」があります。
| 決算書を見る手段 | 決算書を見ない(重く見ない)手段 |
|---|---|
| 銀行・信用金庫の融資 | 売掛金の資金化 |
| 公的融資(公庫・制度融資) | 請求書のカード払い |
| 事業者ローン | 支払条件の交渉 |
赤字で断られたのなら、左側で詰まっているということです。右側にはまだ道が残っています。
ただし右側は費用が高くなります。だからまず左側を諦めきらないことが大切です。
仕組み:赤字でも公的融資は相談できる
意外に知られていない点からお伝えします。
日本政策金融公庫は、赤字や創業直後の事業者からの相談にも応じています。民間の金融機関との大きな違いがここにあります。
金利は年1〜3%程度で、他の手段とは一桁違います。赤字だからと最初から諦めるのは、いちばん高い選択になりかねません。
ただし、赤字の中身は問われます
「赤字だから貸せない」ではなく、「この赤字はどういう赤字か」が見られます。
| 赤字の種類 | 見られ方 |
|---|---|
| 設備投資による一時的な赤字 | 説明しやすい。前向きな支出として理解されます |
| 原価の高騰による赤字 | 価格転嫁の見通しを示せるかが問われます |
| 売上の減少が続く赤字 | 最も厳しい。改善策が具体的かどうかで決まります |
| 役員報酬が高いことによる赤字 | 報酬を下げれば黒字になる旨を説明できます |
共通するのは「原因が言えるか」「いつ戻すかが言えるか」です。
説明の仕方
面談では、次の3つを順に話してください。
- いつから、なぜ赤字になったか——原因を1つに絞って言う
- すでに何をしたか——固定費の削減など、着手済みのこと
- いつ黒字に戻る見込みか——月次の数字で示す
「頑張ります」では判断できません。数字と期限が入っているかどうかで、結果は変わります。
比較:決算書を見ない手段
左側で足りない、あるいは間に合わない場合です。
売掛金の資金化
取引先に出した請求書を、入金日より前に現金にします。
これは借入ではありません。審査で主に見られるのは、自社の決算ではなく取引先の支払い能力です。
つまり自社が赤字でも、取引先がしっかりした会社であれば通ることがあります。
とくに次の場合は通りやすくなります。
- 取引先が上場企業や官公庁
- 取引先が国保連や社会保険診療報酬支払基金などの公的機関
- 取引の実績が長く、入金の遅れがない
ただし費用は重くなります。手数料10%を入金まで30日の請求書に使えば、年利に直しておよそ120%相当です(目安)。
支払条件の交渉
費用がまったくかかりません。赤字のときこそ、ここを先に試してください。
仕入先への支払いを1か月待ってもらう。銀行への返済を一時的に減らしてもらう。税金や社会保険料の猶予を申請する。
手順:どこから当たるか
順番を決めます。時間があるほど、安い手段が使えます。
| 残された時間 | 当たる先 |
|---|---|
| 1か月以上 | 公的融資(公庫・制度融資) |
| 2週間〜1か月 | 公的融資+支払条件の交渉 |
| 1週間 | 支払条件の交渉+売掛金の資金化の見積もり |
| 3日以内 | 売掛金の資金化 |
いま時間があるなら、公的融資の相談を先に始めてください。結果が出るまでの間に、他の手段の見積もりを取っておけば、どちらに転んでも対応できます。
注意点:赤字のときに気をつけること
追い詰められているときほど、危ない話が近づいてきます。
- 「赤字でもOK」「審査なし」をうたう業者——貸金業の登録がない違法な貸付のおそれがあります
- 契約書に返済・利息・担保・保証人と書かれているもの——債権の売買ではなく貸付になっています
- 毎月続けて資金化する——手数料が固定費として積み上がり、赤字が深くなります
金融庁も、実質的な貸付にあたるものについて注意喚起を出しています。
条件:金融機関が実際に見ているところ
赤字のときに何を準備すればよいか。判断の材料になる点を挙げます。
直近の試算表
決算書は年に1回です。そのあと数字がどう動いたかを示せるのが試算表です。
赤字の決算を出したあとに改善しているなら、試算表がその証拠になります。決算書だけを持っていくのと、試算表を添えるのとでは、話がまったく変わります。
資金繰り表
今後6か月の入るお金と出るお金を、月ごとに並べたものです。
「返せるかどうか」を判断する材料が、これしかありません。入金は確定しているものだけを書いてください。
役員報酬の状況
役員報酬が高いために赤字になっている場合、報酬を下げれば黒字になる旨を説明できます。
実際に下げた実績があるなら、その事実も伝えてください。改善の意思を示す材料になります。
借入の一覧
借入先・残高・毎月の返済額・保証の有無を並べます。
全体像を把握していない状態で相談に行くと、そこで話が止まります。作るまで30分です。
種類:赤字の会社が使える公的な相談窓口
1人で抱える必要はありません。
中小企業活性化協議会が各都道府県に設置されています。収益力の改善から事業再生まで、無料で相談できる公的な機関です。
商工会議所・商工会でも経営の相談を受け付けています。マル経融資の窓口も兼ねており、無担保・無保証人で金利は年2.70%です(2026年8月3日現在・特別利率F。出典: 日本政策金融公庫「マル経融資」・2026年8月7日確認)。
ただし商工会議所の経営指導を受けてから申し込むまでに時間がかかります。赤字を自覚した段階で相談しておく価値があります。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- まだ数か月は持つ——公庫の支店に電話し、相談の予約を取る
- 今月が厳しい——手元の請求書を集計し、見積もりを2社に依頼する
- 原因が分からない——直近3期の数字を並べ、どこから変わったかを探す
赤字そのものより、原因を説明できないことのほうが不利になります。
参考にした公的資料
- 日本政策金融公庫——公的融資の申込先(2026年8月7日確認)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」——実質的な貸付への注意(2026年8月7日確認)
- 国税庁「換価の猶予の申請手続」——換価の猶予・納税の猶予(2026年8月7日確認)
このページは、資金調達の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。融資の可否は個別の審査によって決まります。実際のお申し込みの前に、各機関・各社の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
赤字だと、もう借りられませんか?
そうとは限りません。日本政策金融公庫は、赤字や創業直後の事業者からの相談にも応じています。重要なのは赤字の中身です。一時的な要因による赤字なのか、構造的なものなのかで判断は変わります。改善の道筋を紙で示せるかどうかが分かれ目になります。
決算書を見ない資金調達はありますか?
売掛金を買い取ってもらう方法(ファクタリング)があります。借入ではないため、審査で主に見られるのは自社の決算ではなく、取引先の支払い能力です。赤字でも税金の滞納があっても使える場合があるのは、この構造によります。
赤字の種類で、通りやすさは変わりますか?
変わります。設備投資による一時的な赤字、原価の高騰による赤字、売上の減少が続く赤字では、金融機関の見方が異なります。原因を説明でき、いつどう戻すかを示せる赤字ほど、話は進みやすくなります。
どこから相談すればよいですか?
費用の安い順です。まず支払条件の交渉、次に公的融資、それでも間に合わなければ売掛金の資金化という順番になります。時間があるほど安い手段が使えるため、気づいた時点で動くのが最も有利です。