赤字決算でも資金調達はできる|種類別の通りやすさ

更新日: 2026-08-21

目次

決算書が赤字——それだけで銀行の窓口が急に冷たくなった気がして、「うちはもうどこからも借りられないのでは」と不安になりますよね。

でも実際には、審査で見られるのは「赤字かどうか」ではなく「どんな赤字か」です。同じ赤字でも、通る赤字と通らない赤字がある。この記事では、赤字を3種類に分けて「どこに・何を持って行けば通りやすいか」を整理し、最後に「借りてはいけない赤字」の境界まで正直にお伝えします。

あなたの赤字はどれ? 3種類×調達先の対応表

赤字の種類中身通りやすい調達先持って行く資料
創業赤字開業初期の先行投資でまだ利益が出ていない日本政策金融公庫(創業融資系)・信用金庫創業計画書・月次の売上推移(伸びていること)
一過性の赤字大口の入金遅れ・設備投資・特別損失など原因が特定できる公庫・保証付き融資・銀行への再説明原因の説明資料+原因を除いた場合の損益+資金繰り表
慢性的な赤字数期連続で構造的に利益が出ていない融資はどこも厳しい。先に公的相談窓口へ経営改善計画(専門家の支援を受けて作る)

ポイントは真ん中の列です。「一時的な原因を除けば黒字です」と数字で示せる赤字は、金融機関にとって「貸せる赤字」です。逆に慢性赤字への追加融資は、金融機関から見ると返済原資が見えません——ここは後半で正面から扱います。

まず、どの種類でも共通して使える「決算書を見られない調達」から見ておきましょう。

決算書で審査されない調達:ファクタリング

未入金の請求書があるなら、ファクタリング(請求書の買い取り)は赤字の影響をほとんど受けません。審査の対象があなたの決算書ではなく、請求書の相手(取引先)の信用力だからです

  • 最短その日に資金化できます
  • 決算書の提出自体が不要の会社もあります(QuQuMoは請求書と通帳の2点のみ)
  • 費用は請求書額の数%〜十数%。借金にはなりません

即日ファクタリングの比較を見る

ただし、これは「時間を買う」手段です。どの手段で何ヶ月の時間が買えるのか、コストと合わせて整理しておきます。

手段買える時間の目安コストの性質
ファクタリング入金サイト分(1〜2ヶ月)請求書額の数%〜十数%(1回ごと)
事業者ローン借入額÷月々の返済額年6〜18%の金利が続く
請求書カード払い最長60日3%台(1回ごと)
公的融資据置期間+長期返済で最も長い低金利。ただし実行まで数週間

高コストの手段で買った時間は、低コストの調達か黒字化の打ち手に変えて初めて意味を持ちます。買った時間で何をするか——次の公的融資の準備です。

公的融資は、赤字の理由を聞いたうえで判断します。

公的融資:赤字に一番向き合ってくれる窓口

銀行に断られた赤字企業の受け皿として現実的なのは、日本政策金融公庫と信用保証協会付き融資です。

赤字であることが要件になっている制度があります

ここは多くの方が知りません。

日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)は、業況が悪化した事業者のための制度です。その利用要件そのものに、赤字や損失に関する項目が並んでいます。

次のいずれかに当てはまれば対象になり得ます。

  • 直近の決算期の売上高が、前期または前々期に比べ5%以上減少している
  • 直近の決算期の純利益額または売上高経常利益率が、前期または前々期に比べ悪化している
  • 直近の決算期において、赤字幅が縮小したものの、税引前損益または経常損益で損失を生じている
  • 前期に損失を生じており、直近期は利益が増えたものの、利益準備金や任意積立金の合計を上回る繰越欠損金がある
  • 前期に損失を生じており、直近期は利益が増えたものの、債務償還年数が15年以上である
  • 最近の取引条件が、回収条件の長期化または支払条件の短縮化等により0.1か月以上悪化している

出典は日本政策金融公庫「経営環境変化対応資金」です(2026年8月21日確認)。

前提は「一時的に業況が悪化しているが、中長期的には回復・発展が見込まれる」ことです。つまり赤字であること自体は失格の理由になりません。回復の道筋を説明できるかが問われます。

項目内容
融資限度額7,200万円
返済期間(運転資金)10年以内(うち据置期間3年以内)
返済期間(設備資金)20年以内(うち据置期間3年以内)
併用できる特例経営者保証免除特例制度/賃上げ貸付利率特例制度

据置期間を3年以内で置けるため、立て直しの期間は利息だけの負担にできます。

経営者保証免除特例制度が併用できる点も見落とさないでください。赤字だからと個人保証を当然のように受け入れる前に、外せないかを相談する価値があります。

つなぎ資金の型と使える制度を読む

そのほかの制度の一覧と条件は公庫の融資制度検索で確認できます。

窓口で必ず聞かれるのは、次の4つです。逆に言えば、この4つを紙で用意していけば審査は前に進みます。

  1. 赤字の原因は何か(上の表の「種類」を自分の言葉で)
  2. 返済原資はどこから出るか(毎月いくら返せるか)
  3. いつ黒字化するか(根拠となる受注・改善策)
  4. 資金繰りの見通し(月次の資金繰り表)

資金繰り表は難しいものではありません。「月初残高+入金−出金=月末残高」を12ヶ月分並べるだけの表です。これがあるだけで、金融機関の目線が「危ない会社」から「管理できている会社」に変わります。銀行への融資申請の全体像は銀行に断られたときの動き方へ。

借りていい赤字・借りてはいけない赤字

ここが、この記事で一番伝えたいことです。

借りていい赤字——資金の使い道が「黒字化の打ち手」になっている場合。受注済み案件の仕入れ資金、回収サイトのズレの穴埋め(入金予定が確定している)、利益改善に直結する投資。これは前向きな借入です。

借りてはいけない赤字——毎月の赤字の穴埋めに借り続ける場合。構造的な赤字を借入で埋めると、赤字はそのままに返済負担だけが増え、数ヶ月後により大きな資金不足が来ます。目安として、「借りたお金が何に変わるか」を説明できないなら、それは穴埋めです。

穴埋め型だと気づいたら、借りる前にやることが2つあります。

  • 各都道府県の中小企業活性化協議会に相談する(無料の公的窓口。返済条件の調整や経営改善計画づくりを支援。出典: 中小機構
  • 止血を先に:コスト削減・不採算の整理・税金滞納があれば分納の段取り

次の決算までにやること(将来の審査を楽にする)

最後に、いま動けなくても次につながる3つを置いておきます。

  1. 青色申告の欠損金繰越を正しく使う(赤字を翌期以降の黒字と相殺できる制度。申告を怠ると使えません。詳細は税理士へ)
  2. 月次試算表と資金繰り表を毎月つくる習慣(金融機関への提出物が常に手元にある状態にする)
  3. 小さくても黒字の月をつくる(月次で黒字が出始めた実績は、再申請時の一番強い証拠になります)

赤字は事業の終わりではなく、調達の設計を変えるサインです。まずは自分の赤字が3種類のどれかを特定して、対応表の窓口から動いてみてください。


この記事は情報の提供が目的で、特定のサービスへの申し込みをすすめるものではありません。税務の取り扱いは必ず税理士等の専門家に確認してください。掲載条件は各公式サイトで最新情報をご確認ください。

条件:役員貸付金と役員借入金の扱い

赤字の会社でとくに問題になる項目です。

この2つは、まったく逆の意味を持ちます。

科目内容金融機関の見方
役員貸付金会社が役員に貸している不利に働きます
役員借入金役員が会社に貸している説明できれば有利にもなります

役員貸付金がある場合

「会社の金が個人に流れている」と読まれます。

経営者保証を外す要件でも、法人と個人の資産の分離が問われます。

解消の方法は顧問税理士に相談してください。放置するほど不利になります。

役員借入金がある場合

これは説明の仕方で意味が変わります。

「返済を求めない性質のものです」と説明できれば、実質的に資本に近いものとして見られることがあります。

債務超過に見えていても、この説明で状況が変わることがあります。

決算後の数字が動いていることは、試算表でしか示せません。

手順:試算表を作る意味

赤字の会社にとって、いちばん効く資料です。

決算書は年に1回です。そのあと数字がどう動いたかを示せるのが試算表です。

何を示せるか

  • 赤字の月と黒字の月が分かる——通年の赤字でも、直近は黒字かもしれません
  • 改善の動きが見える——固定費を下げた効果が数字に出ます
  • いつ戻るかを言える——推移から見通しを示せます

決算書だけを持っていくのと、試算表を添えるのとでは、話がまったく変わります。

顧問税理士に依頼すれば作ってもらえます。まだ作っていないなら、今日依頼してください。

赤字でも使える資金調達を読む

公的融資とは(公庫・制度融資・マル経)

よくある質問

赤字決算でも融資は受けられますか?

可能性はあります。審査で重要なのは「赤字かどうか」より「赤字の種類と、返済原資を説明できるか」です。創業期の先行投資による赤字や、一時的な要因(大口の入金遅れ・設備投資・特損)による赤字は、黒字化の道筋を数字で示せれば通る余地があります。

赤字だと使えない公的融資ばかりですか?

そうとは限りません。日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)は、直近の決算で損失を生じている場合や、純利益額・売上高経常利益率が前期より悪化している場合が利用要件に含まれます。前提は一時的な悪化で中長期的には回復が見込まれることで、赤字であること自体は失格の理由になりません。

赤字でも経営者保証を外せますか?

経営環境変化対応資金には経営者保証免除特例制度が併用できると案内されています。要件を満たす必要はありますが、赤字だからと個人保証を当然のこととして受け入れる前に、外せないか相談する価値があります。

赤字でもファクタリングが使えるのはなぜですか?

審査の対象があなたの決算書ではなく、請求書の相手(取引先)の信用力だからです。あなたが赤字でも、取引先がきちんと支払う会社なら買い取ってもらえます。決算書不要(請求書と通帳のみ)の会社もあります。

赤字の年は税金がどうなりますか?

法人が青色申告をしていれば、赤字(欠損金)を翌期以降に繰り越して将来の黒字と相殺できる制度があります(欠損金の繰越控除)。赤字の年の申告を正しくしておくことが、将来の節税につながります。詳細は税理士に確認してください。

赤字が続いていて、借りるべきか迷っています。

「何のための資金か」で判断してください。黒字化の打ち手(受注済み案件の仕入れ・回収サイト改善)に使う資金なら前向きな借入ですが、毎月の赤字の穴埋めに借り続けるのは問題の先送りです。後者の場合は、借りる前に各都道府県の中小企業活性化協議会(無料の公的相談窓口)に相談してください。

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