差押えを解除する方法|国税の差押えが外れる条件
更新日: 2026-08-27
この記事でわかること
- 国税の差押えには、必ず解除する場合と解除できる場合があります
- 完納だけでなく、第三者による納付も解除の要件に含まれます
- 差押超過や、換価しやすい別の財産の提供も解除を検討する条件です
- 換価の猶予は納期限から6か月以内に国税局または税務署へ申請します
- 滞納処分の停止は税務署長が職権で行い、停止後は既存の差押えが解除されます
目次
国税の差押えを受けると、どうすれば外れるのかが気になるはずです。差押えの解除は、頼めば認められる制度ではありません。法律上の要件に当たるかどうかで扱いが決まります。
最初に確認するのは、解除を求める理由がどの要件に当たるかです。
国税徴収法第79条には、解除しなければならない場合と、解除できる場合があります。さらに、滞納処分の停止に伴って解除される道もあります。
この記事では、それぞれの条件と違いを順番に整理します。
まず結論:差押えは「申請して解除してもらう」制度ではありません
結論からいえば、読者が考えるべきことは解除の要件に当てはめることです。
完納したときは、解除しなければならない要件があります。差押えが多すぎるときや、別の財産を提供したときは、解除できる要件があります。
つまり、理由によって根拠も扱いも違います。
「解除してください」という希望だけでは、どの条件かを判別できません。
まず、差押えに係る国税が残っているかを確認します。次に、差押財産の価額や、代わりに提供できる財産があるかを分けて考えます。差押えの要件は、国税徴収法第47条に定めがあります。解除について確認する中心は、国税徴収法第79条です。
仕組み:解除には「しなければならない」と「できる」の2つがある
第79条第1項は、差押えを解除しなければならない場合を定めています。これを必要的解除として整理できます。第79条第2項は、差押えを解除することができる場合です。こちらは、要件に当たれば必ず外れるという書き方ではありません。
「しなければならない」と「できる」は、同じ意味ではありません。
違いを先に押さえると、完納と財産の入れ替えを混同せずに済みます。
| 区分 | 主な場面 | 扱い |
|---|---|---|
| 第79条第1項 | 国税の全額が消滅した場合など | 解除しなければならない |
| 第79条第2項 | 差押超過や適当な財産の提供など | 解除することができる |
第1項第2号には、別の場面もあります。差押財産の金銭的価値が全く失われたときは、この号に当たるものとして扱われます。

条件:完納・充当のほか、第三者が納めても解除されます
最も分かりやすいのは、差押えに係る国税の全額が消滅した場合です。
第79条第1項第1号には、納付、充当、更正の取消しなどが示されています。差し押さえた金銭や配当金を国税の全額に充てた場合も含まれます。
免除や法律の規定の変更などで、国税の全額が消滅した場合も対象です。
本人だけが納められるわけではありません。
ここでいう納付には、国税通則法第41条第1項による第三者の納付も含まれます。第三者が納めたという理由だけで、納付から除かれるわけではありません。一部だけを納めた場合との違いにも注意が必要です。
この要件で示されているのは、差押えに係る国税の全額が消滅した場合です。
また、充当とは国税通則法第57条による充当を指します。更正の取消しは、国税通則法第24条などによる賦課処分の取消しです。
条件:差押えが多すぎるとき、別の財産を出せるとき
国税徴収法第79条第2項には、差押えを解除できる条件があります。
一つは差押超過による解除です。差押えに係る国税に優先する債権が弁済された場合などは、財産の価額との関係が変わります。
差押財産の改良などで、価額が増加した場合も挙げられています。
ただし、解除できる範囲には限度があります。超過する価額に相当する範囲を超えて、解除することはできません。
さらに、差押財産が不可分物なら、その差押えは解除しません。
もう一つが、第79条第2項第2号の適当な財産の提供です。
原則として、換価と保管、または引揚げに便利な財産であることが求められます。その財産の換価代金から、滞納国税の全額を徴収できることも条件です。
価値があるだけでは足りず、換価後に全額を徴収できる財産であることが基準です。
第2項には、同じ財産を3回公売に付した場合もあります。境界争いなどの係争や、事件や事故の現場となった不動産も例示されています。
これらは、差押財産の価値が著しく損なわれていると認められる事情の例です。

手順:換価の猶予を申請して差押えを止める
一時に納めると事業の継続が難しくなるなら、申請による換価の猶予も確認します。
ここでいう「事業の継続を困難にするおそれ」には、具体的な基準があります。まず、不要不急の資産を処分するなど、事業経営の合理化を行った後で判断します。
その後も一時に納付すると、事業の休止や廃止などにつながるおそれがある場合です。
申請期限は、納期限から6か月以内です。提出先は国税局または税務署と案内されています。
期限だけでなく、猶予が始まる日も重要です。
始期は、原則として換価の猶予の申請書を提出した日です。ただし、その日が法定納期限以前なら、法定納期限の翌日になります。猶予期間は、1年を限度とします。希望する長さがそのまま採用される仕組みではありません。
財産の状況などを踏まえ、合理的で妥当な金額を分割して納めます。その条件で完納できると認められる、最短の期間です。
なお、現に納税の猶予をしている国税には、この換価の猶予を行いません。

注意点:申請できる6か月の間も、差押えは止まりません
納期限から6か月以内なら、換価の猶予を申請できます。
しかし、申請期間が残っていることと、滞納処分が止まっていることは別です。
6か月の申請期間内でも、差押えなどの滞納処分は妨げられません。
申請期限の最終日まで、何も起きないという意味ではないのです。
この違いを見落とすと、期限内だから待てると誤解しやすくなります。確認すべきなのは、申請できる残り日数だけではありません。申請書をいつ提出するかも確認してください。猶予の始期は、原則として申請書が提出された日だからです。
条件:滞納処分の停止は、申請できません
滞納処分の停止は、滞納者が申請して開始してもらう制度ではありません。
税務署長が職権で行うことができる措置です。そのため、停止を受けないことについて、不服申立てや訴えを提起することはできません。
停止の要件は、第153条第1項に三つ示されています。
一つ目は、滞納処分を執行できる財産がないときです。判定時に、処分予定価額が所定の合計額を超える見込みがない場合が含まれます。
その合計額は、滞納処分費と国税に優先する債権です。
すべての対象財産を差し押さえ、換価や債権の取立てを終えた後も、徴収できない国税がある場合も含まれます。
二つ目は、生活を著しく窮迫させるおそれがあるときです。対象は個人の滞納者に限られます。
生活保護法の適用を受けなければ、生活を維持できない程度になるおそれが基準です。
三つ目は、住所または居所と財産が、ともに不明な場合です。どちらか一方だけが不明な場合ではありません。
停止が行われると、その期間中は対象の国税について新たな差押えができません。
そして、すでに差し押さえた財産は、解除しなければなりません。停止の通知は、原則として書面で行われます。強制換価手続が進み、交付要求などをしている場合は、原則として停止しません。ただし、徴収見込額がないと認められるときは、停止して差し支えないとされています。
停止は、原則として滞納者が持つ滞納国税の全部について行います。一部を停止できる場合の定めもあります。
費用:猶予が認められると延滞税が軽くなります
換価の猶予が認められると、税の負担にも変化があります。
延滞税の一部が免除または軽減されます。具体的な率ではなく、まずこの効果を押さえてください。
猶予期間は原則1年以内です。
通達上の換価の猶予では、1年を限度とする最短期間が示されています。分割額は、財産の状況などから合理的で妥当な金額として判断されます。したがって、猶予と解除は同じ言葉ではありません。猶予を検討するときも、差押えの解除要件とは分けて確認する必要があります。
比較:別の財産を提供する道と、差押超過による解除
「いま押さえられている財産が事業の生命線だ」という場面を考えます。
比較するのは、別の適当な財産を提供する道と、差押超過による解除です。どちらも第79条第2項にありますが、着眼点が違います。
| 比較点 | 適当な財産の提供 | 差押超過による解除 |
|---|---|---|
| 根拠 | 第79条第2項第2号 | 第79条第2項第1号 |
| 中心となる判断 | 別の財産が換価や保管などに便利か | 差押財産の価額に超過があるか |
| 徴収との関係 | 換価代金から滞納国税の全額を徴収できるか | 超過価額に相当する範囲か |
| 財産の性質 | 提供する財産の条件を確認する | 不可分物は解除しない |
適当な財産の提供では、いまの財産以外に目を向けます。提供する財産には、換価や保管などの便利さが必要です。
加えて、換価代金から滞納国税の全額を徴収できることが基準になります。
差押超過では、すでに押さえられている財産の価額を見ます。解除できるのは、超過する価額に相当する範囲までです。
不可分物なら、超過があっても差押えは解除しません。
したがって、財産の価額だけでなく、分けて解除できる性質かどうかも違いになります。
今日やる一歩
最初の一歩は、どの解除要件を確認するのかを一つ選ぶことです。
差押えに係る国税の全額が消滅しているなら、第79条第1項の条件を確認します。第三者の納付も、この納付に含まれます。
差押財産の価額が大きいなら、差押超過の範囲と不可分物かどうかを分けます。
別の財産を提供するなら、換価や保管などに便利かを確認します。換価代金から国税の全額を徴収できるかも要点です。一時の納付で事業の継続が難しくなるなら、納期限から6か月以内かを確かめます。期限内なら、国税局または税務署への申請が案内されています。
ただし、6か月の期間内でも滞納処分は止まりません。
完納、財産の価額、別の財産、換価の猶予。まず自分が確認する項目を混ぜずに整理してください。
参考にした公的資料
- 国税庁「国税徴収法基本通達 第79条関係 差押えの解除の要件」
- 国税庁「国税徴収法基本通達 第153条関係 滞納処分の停止の要件等」
- 国税庁「国税徴収法基本通達 第151条の2関係 申請による換価の猶予の要件等」
- 国税庁「国税徴収法基本通達 第47条関係 差押えの要件」
- 国税庁「G-9 換価の猶予の申請手続」
- 国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」
この記事は制度の説明であり、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。
よくある質問
国税を完納すれば差押えは解除されますか?
はい。差押えに係る国税が納付、充当、更正の取消しなどにより消滅したときは、国税徴収法第79条第1項により差押えを解除しなければなりません。
本人以外が国税を納めても解除の対象になりますか?
はい。国税徴収法第79条第1項第1号の納付には、国税通則法第41条第1項による第三者の納付も含まれます。
別の財産を提供すれば、いまの差押えは解除されますか?
換価や保管などに便利で、換価代金から滞納国税の全額を徴収できる財産を提供した場合は、国税徴収法第79条第2項第2号による解除を検討する条件になります。
換価の猶予はいつまでに申請しますか?
納期限から6か月以内に、国税局または税務署へ申請します。ただし、その申請期間内でも差押えなどの滞納処分は妨げられません。