会社の借入が返済できないとき|4段階の順番

更新日: 2026-09-18

この記事でわかること

  • 返済が難しくなったときの進み方は、中小企業の事業再生等に関するガイドラインに順番として書かれています。
  • 条件の緩和、債務の減免等、スポンサー支援、廃業の検討という4つの段階が、この順で示されています。
  • 信用保証協会が代位弁済をしても債務は消えず、返済する相手が金融機関から信用保証協会に変わります。
  • 私的整理では、リストから第三者支援専門家を選び、主要債権者全員の同意を得て手続を始めます。
  • 経営者保証に関するガイドラインは、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅を残す検討を求めています。
目次

まず結論:返済が難しいときの進み方は、公的なガイドラインに順番が書かれています

返済できない、と気づいた日の夜は、考えが散らかります。

何から手をつけるかを、ゼロから決める必要はありません。令和4年3月、中小企業の事業再生等に関するガイドラインがまとめられました。策定したのは中小企業の事業再生等に関する研究会です。金融庁は、このガイドラインが令和4年3月4日に公表されたと案内しています。

ガイドラインは3部構成になっています。

第一部が目的、第二部が基本的な考え方、そして第三部が私的整理の手続です。返済に行き詰まったときの進み方は、この第二部に書かれています。

順番の要点は単純です。条件の緩和が先で、債務の減免は後。そのあとにスポンサー支援が来て、最後に廃業の検討が並びます。段階は4つ。まとめて持ち出すものではありません。

全国銀行協会は、このガイドラインの案内で次のように書いています。中小企業者と金融機関等が「お互いの立場をよく理解し、共通の認識の下で」取り組むこと。そして「一体となって事業再生等に向けた取組みを進めていくことが重要です」

つまり、黙って延滞することは想定されていません。想定されているのは、こちらから話を持っていく形です。

仕組み:条件の緩和から債務の減免へ、段階を踏んで検討します

第二部には「有事における中小企業者と金融機関の対応」という節があります。ここが今回の中心です。

最初の段階から見ていきます。ガイドラインは、事業改善計画の策定・実行を通じて本源的収益力の回復に向けた自助努力を行うこと、そして非事業用資産の換価・処分等を行うことを先に挙げています。

それでもなお約定の元本返済が困難となり、やむを得ない場合。そのときに初めて、金融機関に対して元本返済猶予その他債務の返済条件の緩和等の要請を検討する、という順序です。

急激な資金流出を抑える必要があるときは、元本返済の一時停止・一時猶予の要請を検討するとも書かれています。

条件の緩和は、ゴールではありません。ガイドラインは、条件緩和を受けたあとの過ごし方も書いています。金融機関や実務専門家の支援・助言等を得つつ、有事に至った原因を明らかにし、事業再生計画の策定・実行を通じて収益力の回復に努める、とされています。

つまり、猶予してもらった期間は原因を突き止めるための時間として使うことになります。

次の段階です。条件緩和を受け、収益力の回復に努めてもなお、金融債務全額の返済が困難であり、やむを得ない場合。ここで債務減免等の要請を検討する段階に入ります。

対象は、事業再生を図るために必要かつ合理的な範囲に限られます。

債務減免等には、債務の資本化も含まれます。ガイドラインは注記で「デット・エクイティ・スワップ。債務を株式と交換すること。」と説明しています。借金を株式に振り替える形です。

そして、この段階には条件が付いています。債務減免等を要請するとき、中小企業者は経営責任と株主責任を明確化するとされています。

減免だけを求めることはできない、と読むのが自然です。

段階は、さらに2つ続きます。

条件緩和と債務減免等の対応を経てもなお、事業再生が困難である場合。スポンサー支援や経営の共同化により迅速・確実に事業再生を実行できるときは、これらの対策を真摯に検討する、とされています。スポンサー支援を求めるなら、金融機関や実務専門家の支援・助言を得つつ、透明性のある手続でスポンサーを選定するように努めることになります。

それでも届かないときが、最後の段階です。

金融支援を受け、収益力の回復に努めてもなお赤字が継続し、資金流出を止めることができないとき。ガイドラインは、ここで事業廃止(廃業)を検討するとしています。

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どの借入がどの保証に付いているかは、契約書をそろえて確かめます。

種類:保証付きの融資は、返済する相手が信用保証協会に変わります

ここで、借入の中身を分けて考えます。

信用保証協会の保証が付いた融資は、返済が止まったときの動き方が違います。全国信用保証協会連合会は代位弁済を、次のように説明しています。「信用保証付の貸付金等が、中小企業・小規模事業者の倒産などの事由により金融機関へ返済できなくなった場合に、信用保証協会が金融機関に対して貸付残額を支払うこと」。

金融機関には、残額が支払われます。

では、こちらの債務はどうなるのか。ここを誤解したまま進む方がいます。連合会は求償権をこう説明しています。「代位弁済をすることにより、信用保証協会は中小企業・小規模事業者および保証人に対して代位弁済額を元本とする債権を持つことになる。この債権を求償権という」。

読み替えると、こうなります。債務は消えません。消えるのではなく、返済する相手が金融機関から信用保証協会に移ります

そして、この債権は保証人に対しても及びます。社長個人が連帯保証しているなら、その保証も同じ相手に向き直ることになります。

相手が増えることも見込まれています。事業再生等に関するガイドラインは、有事に至った場合の対応をこう書いています。信用保証協会、金融機関から債権を譲り受けたサービサー等、貸金業者、リース債権者。これらにおいても同様の対応を行うことが望ましい、とされています。

だからこそ、話が動く前にやることがあります。手元の借入を1本ずつ並べ、保証付きかどうかを契約書で確かめてください。保証付きと保証なしでは、交渉する相手の顔ぶれが変わるからです。

手順:私的整理を選ぶとき、誰に頼み、何から始めるか

条件の緩和だけでは足りない。そう判断したときに進むのが、ガイドライン第三部の手続です。

第三部は5つの節でできています。対象となる私的整理、本手続の基本的な考え方、本手続の適用対象となる中小企業者、再生型私的整理手続廃業型私的整理手続の順です。

事業を続けながら立て直す場合は、再生型を見ます。

登場する専門家は2種類あり、役割が違います。1つは外部専門家で、弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士等の専門家を指します。相談相手です。

もう1つが第三者支援専門家です。ガイドラインは、弁護士、公認会計士等の専門家であって、再生型私的整理手続及び廃業型私的整理手続を遂行する適格性を有し、その適格認定を得たものと定めています。

手順は、ここから具体的になります。

中小企業者は、必要に応じて外部専門家と相談しつつ、第三者支援専門家の候補者を公表されたリストから選定します。次に主要債権者に対して、再生型私的整理手続を検討している旨を申し出ます。

そのうえで、第三者支援専門家の選任について主要債権者全員からの同意を得ます。

選ばれる側にも条件があります。第三者支援専門家は、中小企業者及び対象債権者との間に利害関係を有しない者とされています。

例外も用意されています。対象債権者全員から同意を得た場合は、リストにない第三者支援専門家を選定することも可とされています。

申出を受けた第三者支援専門家は、誠実に対応します。そして主要債権者の意向も踏まえ、再生支援を行うことが不相当ではないと判断した場合に、動き出します。

最初に始まるのは、資産負債及び損益の状況の調査検証です。続いて、事業再生計画策定の支援等が行われます。

手続の中には一時停止の要請という段取りも置かれています。

私的整理では、債権者に集まってもらって計画を説明する場が設けられます。

条件:事業をたたむ場合にも、専用の手続が用意されています

続けるか、たたむか。この判断を迫られる場面もあります。

ガイドライン第三部には、再生型と並んで廃業型私的整理手続が定められています。つまり、たたむという結論もこの枠組みの中にあります。

ここは大切な点なので、はっきり書いておきます。廃業の相談が、制度の外側にあるわけではありません。

第二部は、廃業を検討する場面の中身にも触れています。スポンサー支援により赤字を脱却し事業継続を図ることができる場合には、スポンサーへの事業譲渡等も検討する、とされています。スポンサー支援も得られる見込みのない場合には、早期に事業を廃止し、清算することを検討する、という書き分けです。

同じ廃業でも、譲るのか、たたむのか。先に見るのはスポンサーの有無です。

なお、廃業型私的整理手続の細かな要件は、このページでは扱いません。該当しそうな場合は、ガイドラインの本文にあたるか、第三者支援専門家に直接確かめてください。

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費用:経営者の手元に残せる財産の考え方

会社の債務を整理すると、社長個人の保証はどうなるのか。多くの方が本当に知りたいのは、ここだと思います。

平成25年12月、経営者保証に関するガイドラインが経営者保証に関するガイドライン研究会によってまとめられました。保証債務の整理の場面で、何を残せるかが書かれています。

前提となる考え方は、破産手続における自由財産です。ガイドラインは、破産法第34条第3項及び第4項その他の法令により破産財団に属しないとされる財産、と定義しています。

そのうえで、対象債権者はこれを踏まえつつ、経営者の安定した事業継続や、事業清算後の新たな事業の開始等のために、次の2つを残存資産に含めることを検討するとされています。

1つは一定期間の生計費に相当する額です。もう1つが華美でない自宅等です。

金額の物差しも示されています。「一定期間」の判断においては雇用保険の給付期間の考え方等を参考とする、とされています。「生計費」の判断においては、1月当たりの標準的な世帯の必要生計費として民事執行法施行令で定める額を参考とする、とされています。

ただし、上限があります。

主たる債務者の債務整理が再生型手続の場合は、破産手続等の清算型手続に至らなかったことによる対象債権者の回収見込額の増加額が上限になります。清算型手続の場合は、早期に着手したことによる保有資産等の劣化防止に伴う回収見込額の増加額が上限です。いずれも、合理的に見積もりが可能な場合の話です。

そして、この検討が行われる場面自体にも条件があります。経営者たる保証人による早期の事業再生等の着手の決断が、主たる債務者の事業再生の実効性の向上等に資するものとして、対象債権者にも一定の経済合理性が認められる場合です。

早く動くほど、残せる余地が出てくる。そう読める作りになっています。

黙っていて適用されるものでもありません。ガイドラインは、保証人の側の対応をこう書いています。生計費に相当する額や華美でない自宅等を残存資産に含めることを希望する場合には、「その必要性について、対象債権者に対して説明することとする」

説明するのは、こちらの役目です。

受け手の側も決められています。「対象債権者は、保証人から、a)の説明を受けた場合には、上記の考え方に即して、当該資産を残存資産に含めることについて、真摯かつ柔軟に検討することとする。」

注意点:ガイドラインで整理した場合の信用情報の扱い

最後に、整理したあとの話をします。

経営者保証に関するガイドラインには、信用情報についての定めがあります。「このガイドラインによる債務整理を行った保証人について、対象債権者は、当該保証人が債務整理を行った事実その他の債務整理に関連する情報(代位弁済に関する情報を含む。)を、信用情報登録機関に報告、登録しないこととする。」

代位弁済に関する情報も含むと、かっこ書きで明記されています。

この定めがあるのは、このガイドラインによる債務整理を行った場合です。どの枠組みで整理するかによって扱いが変わる点は、動き出す前に確かめてください。

制度どうしのつながりも見ておきます。経営者保証に関するガイドラインの改定履歴には、令和4年6月の改定理由が書かれています。まず、令和4年3月4日に「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が新たな準則型私的整理手続として策定されたこと。あわせて、同年4月1日付で中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合し、中小企業活性化協議会が発足したことが挙げられています。

会社の債務と経営者の保証は、別々に動くものではありません。2つのガイドラインは、つながる形で手が入れられています。

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今日やる一歩

今日のうちにできることは、机の上で終わります。

まず、借入を1本ずつ書き出してください。相手の金融機関名、残高、毎月の元本と利息、そして信用保証協会の保証が付いているかどうか。この4項目だけで構いません。

次に、自社がどの段階にいるかを1行で書きます。条件の緩和で足りる段階か、債務の減免まで要る段階か。ガイドラインの順番に当てはめて考えます。

そのうえで、金融機関に連絡する日を決めてください。早い着手が残せる資産の検討につながる、という考え方がガイドラインには置かれています。

参考にした公的資料

このページは資金調達の判断材料をお伝えするものであり、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。制度や条件は変わることがあります。実際のお手続きの前に、必ず各機関・各社の公式サイトでご確認ください。

よくある質問

借入が返済できないとき、最初に金融機関へ何を求めればよいですか?

中小企業の事業再生等に関するガイドラインは、自助努力を尽くしてもなお約定の元本返済が困難な場合に、元本返済猶予その他の返済条件の緩和を要請することを検討するとしています。

信用保証協会が代位弁済をすると、借金はなくなりますか?

なくなりません。信用保証協会は代位弁済額を元本とする求償権を持つため、返済する相手が金融機関から信用保証協会に変わります。

私的整理を進める第三者支援専門家は、自分で選べますか?

公表されたリストから候補者を選定し、その選任について主要債権者全員からの同意を得る手順です。対象債権者全員の同意があればリストにない専門家も選べます。

保証債務を整理すると、経営者の自宅は必ず手放すことになりますか?

経営者保証に関するガイドラインは、早期着手に経済合理性が認められる場合、華美でない自宅等を残存資産に含めることを対象債権者が検討するとしています。

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