整骨院・接骨院の資金繰り|受領委任の入金が遅いときにやること
更新日: 2026-08-14
この記事でわかること
- 整骨院の収入は一部負担金と療養費の2本立てであること
- 受領委任という仕組みで、療養費の入金に時間がかかること
- 施術管理者になるには実務経験と研修の修了が必要であること
- 返戻があると入金がさらにずれること
- 何から手を付けるべきかの順番
目次
患者さんは来ている。それなのに月末の支払いに足りない。
整骨院の資金繰りは、収入が2本立てになっているという構造から来ています。
このページでは、その構造を踏まえて何をすべきかを整理します。
最初に、収入がどう分かれているかを確認します。次に、受領委任の仕組みを説明します。そのあと使える手段を並べ、最後に請求の精度について触れます。
まず結論:収入は2本立てです
整骨院の売上は、次の2つに分かれます。
| 収入の種類 | 誰から | いつ入るか |
|---|---|---|
| 一部負担金 | 患者さん | 当日 |
| 療養費 | 保険者 | 請求してから先 |
売上として帳簿に立っていても、口座に入るのは先になります。
この差が、資金繰りの苦しさの正体です。
自費のメニュー(施術料・物販など)は当日入金です。自費の割合が高いほど、資金繰りは安定します。
仕組み:受領委任とは何か
療養費の入金が遅くなる理由は、この仕組みにあります。
受領委任は、患者さんが本来受け取るべき療養費を、施術所が代わって受け取る仕組みです。
これにより患者さんは窓口で一部負担金だけを払えばよくなります。患者さんにとっては便利ですが、施術所にとっては入金が後ろにずれることを意味します。
取り扱うには届出が必要です
受領委任を取り扱うには、施術管理者としての届出が必要です。
要件として、実務経験と研修の修了が定められています。各地方厚生局が要件を公表しています(出典: 近畿厚生局「柔道整復施術療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について」・2026年8月7日確認)。
開業を準備している段階であれば、この要件を満たす時間も資金計画に入れてください。
注意点:返戻があると入金がずれます
資金繰りに直結する話です。
請求が返戻されると、その分の入金は次回以降にずれます。
返戻の主な理由は、記載の不備です。
- 負傷原因の記載が不十分
- 施術日や部位の記載に誤りがある
- 患者さんの署名に不備がある
返戻が多いと、いつ・いくら入るのかという見通しそのものが立たなくなります。
つまり請求の精度を上げることが、そのまま資金繰りの改善になります。
療養費の取扱いは見直しが行われています。厚生労働省が療養費の改定等についてで情報を公表しています(2026年8月7日確認)。
制度:令和8年7月から料金が改定されました
2026年(令和8年)7月1日の施術分から、柔道整復療養費の算定基準が改正されています。
厚生労働省の通知(保発0601第4号・令和8年6月1日)で正式に決まったものです。
出典は厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の一部改正について」です(2026年8月14日確認)。
主な料金の変更
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 初検料 | 1,550円 | 1,560円 |
| 再検料 | 410円 | 420円 |
| 施療料(打撲・捻挫) | 760円 | 770円 |
| 後療料(打撲・捻挫) | 505円 | 550円 |
| 温罨法料 | 75円 | 80円 |
| 電療料 | 33円 | 46円 |
| 冷罨法料 | 85円 | 80円 |
| 往療料 | 2,300円 | 2,300円(据置) |
後療料が45円、電療料が13円上がりました。一方で冷罨法料は5円下がっています。
ただし、2部位目の逓減が新設されました
ここが資金繰りにいちばん効く変更です。
備考3が次のように改正されました。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 2部位目 | 逓減なし | 所定料金の100分の80 |
| 3部位目 | 所定料金の100分の60 | 所定料金の100分の60 |
| 4部位目以降 | 3部位目までの料金に含まれる | 同左 |
対象は後療料・温罨法料・冷罨法料・電療料です。
つまり単価は上がりましたが、2部位を施術した場合には8割しか算定できなくなりました。
施術部位の数で、増収か減収かが変わります
後療料に温罨法と電療を併施した場合で、目安を計算してみます。
| 部位数 | 改正前 | 改正後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1部位 | 613円 | 676円 | +63円 |
| 2部位 | 1,226円 | 1,216円 | −10円 |
| 3部位 | 1,594円 | 1,622円 | +28円 |
1部位が中心なら増収、2部位が中心なら横ばいから微減になり得ます。
自院の施術がどの部位数に寄っているかで、7月以降の入金額が変わります。
資金繰りとして何をすべきか
7月施術分の請求が入金される時期に、金額を必ず確認してください。
想定と違っていた場合、原因は施術部位の構成にあります。
「単価が上がったから増える」と見込んで支払いを組むと、ずれる可能性があります。
なお再検料は、算定できる範囲が初回の後療日だけから、初回および2回目の後療日までに広がりました。ここは増収の要素です。
比較:使える手段を安い順に
順番は費用の安い順です。
1. 支払条件の交渉(費用ゼロ)
テナントの家賃、施術機器のリース料、材料の仕入代金。
まず相談してみてください。相談するだけなら費用はかかりません。
2. マル経融資(無担保・無保証人)
商工会議所・商工会の経営指導を受けている小規模事業者向けの制度です。
無担保・無保証人で、金利は年2.70%です(2026年8月3日現在・特別利率F。出典: 日本政策金融公庫「マル経融資」・2026年8月7日確認)。
ただし経営指導を受けてから申し込むまでに時間がかかります。厳しくなる前に相談しておく価値があります。
3. 売掛債権の資金化
間に合わないときの手段です。
整骨院の場合、法人や施設との契約による売掛金があれば、それが対象になり得ます。
どの債権が対象になるかは、契約の形によって変わります。問い合わせのときに、請求の相手が誰かを正確に伝えてください。
手順:まず数字を1枚にする
どの手段を選ぶにせよ、最初にこれが要ります。
今後3か月について、次を月ごとに並べてください。
- 自費の収入——当日入金。読みやすい
- 一部負担金——当日入金
- 療養費の入金見込み——請求済みの分だけ書く
- 出ていくお金——家賃・人件費・リース料・仕入
- 月末に残る額——1〜3を足して4を引く
3は、まだ請求していない分を入れないでください。見込みを混ぜると、金融機関で根拠を聞かれたときに答えられません。
この1枚があるかどうかで、相談の結果は変わります。
注意点:気をつけること
- 療養費の入金を当てにして支払いを組む——返戻があるとずれます。余裕を見てください
- 毎月続けて資金化する——手数料が固定費として積み上がります
- 「整骨院OK」をうたう見知らぬ業者——会社概要・所在地・固定電話を必ず確認してください
契約書に返済・利息・担保・保証人といった言葉が入っている場合、実質的には貸付にあたる可能性があります。金融庁も注意喚起を出しています。
条件:自費の割合を上げるという選択
資金調達の話とは別に、構造そのものを変える方法があります。
自費メニューの割合を上げることです。
自費は当日入金です。療養費のように請求から入金まで待つ必要がありません。
| 収入の構成 | 資金繰りへの影響 |
|---|---|
| 療養費に依存 | 入金が遅く、返戻の影響も受ける |
| 自費の割合が高い | 当日入金。読みやすい |
すぐに変えられるものではありません。ただし、資金繰りが苦しくなる根本の原因がここにある以上、中期的には向き合う価値があります。
今回の不足を埋める手段と、来年同じことが起きないようにする手段は、別々に考えてください。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- まだ数か月は持つ——商工会議所に電話し、マル経融資の相談を始める
- 今月が厳しい——家賃とリース料の支払いについて、相手に相談の連絡を入れる
- 返戻が続いている——直近3か月の返戻理由を並べ、共通点を探す
療養費の入金が遅いことは変えられません。変えられるのは、その前提で計画を組むことです。
参考にした公的資料
- 近畿厚生局「柔道整復施術療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について」——施術管理者の要件(2026年8月7日確認)
- 厚生労働省「療養費の改定等について」——療養費の取扱い(2026年8月7日確認)
- 日本政策金融公庫「マル経融資」——年2.70%・無担保無保証人(2026年8月3日現在・特別利率F)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」——実質的な貸付への注意(2026年8月7日確認)
このページは、資金調達の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。療養費の取扱いや要件は改定されることがあります。最新の内容は厚生労働省・地方厚生局の公表資料でご確認ください。
よくある質問
整骨院の収入はなぜ入金が遅いのですか?
収入が2つに分かれているためです。患者さんから受け取る一部負担金は当日に入りますが、保険者に請求する療養費は受領委任という仕組みを通るため、請求してから入金まで時間がかかります。売上として計上されていても、口座に入るのは先になります。
受領委任とは何ですか?
患者さんが本来受け取るべき療養費を、施術所が代わって受け取る仕組みです。これにより患者さんは窓口で一部負担金だけを払えばよくなります。取り扱うには施術管理者としての届出が必要で、要件として実務経験と研修の修了が定められています。
返戻されると、どうなりますか?
その分の入金が次回以降にずれます。記載の不備や負傷原因の記載漏れなどが理由になります。返戻が多いと、資金繰りの見通しそのものが立たなくなるため、請求の精度を上げることが資金繰りの改善にもつながります。
資金が足りないとき、何から相談すべきですか?
公的融資が最初です。日本政策金融公庫や、商工会議所を通じたマル経融資があります。マル経融資は無担保・無保証人で、金利は年2.70%です(2026年8月3日現在・特別利率F)。売掛債権の資金化は費用が重いため、間に合わないときの手段と考えてください。
令和8年7月の料金改定で、収入は増えますか?
施術部位の数によって変わります。後療料が505円から550円へ、電療料が33円から46円へ引き上げられた一方、2部位目に所定料金の100分の80という逓減が新設されました。後療料に温罨法と電療を併施した場合の目安では、1部位は613円から676円へ増える一方、2部位は1,226円から1,216円へわずかに減ります。自院の施術がどの部位数に寄っているかで結果が変わります。