飲食店の資金繰りが苦しいとき|現金商売でも詰まる訳

更新日: 2026-08-07

この記事でわかること

  • 現金商売でも詰まる理由は、入金と支払いの時間差にあること
  • キャッシュレス決済の入金サイクルが資金繰りを変えたこと
  • 公庫の一般貸付は運転資金4,800万円・5年以内であること
  • 飲食店だけが使える振興事業貸付は運転資金5,700万円・10年以内であること
  • 急ぐときに使える手段と、その順番
目次

売上は落ちていない。それなのに、月末の支払いに足りない。

飲食店は現金商売だから資金繰りは楽なはずだ。そう言われてきました。

いまはもう、そうではありません。

このページでは、なぜ詰まるのかを構造から整理し、使える手段を順番に並べます。

まず結論:3つの時間差が原因です

飲食店の資金繰りが苦しくなる理由は、次の3つに集約されます。

時間差何が起きているか
キャッシュレス決済売上が当日に入らない
食材の仕入支払いは決まった日に来る
家賃・人件費売上に関係なく毎月出ていく

売上があっても、支払日に口座の残高が足りない。これが実態です。

売上と入金の日がずれると、現金商売でも詰まります。

仕組み:キャッシュレスが資金繰りを変えた

これがいちばん大きな変化です。

クレジットカードやコード決済で支払われた売上は、その日には口座に入りません。

決済事業者ごとに締め日と入金日が決まっており、数日から1か月程度あとになるのが一般的です。

つまりキャッシュレスの比率が上がるほど、手元の現金は減ります。

まず確認していただきたいこと

契約している決済事業者の入金サイクルを、正確に把握してください。

  • 締め日はいつか
  • 入金日はいつか
  • 手数料は何%か
  • 入金を早めるオプションがあるか、その費用はいくらか

ここを把握していないと、いつ・いくら入るかが読めません。

入金を早めるオプションがある場合、その費用と、他の資金調達の費用を比べてください。数%であれば、そちらのほうが安いことがあります。

仕組み:仕入と家賃のタイミング

出ていくお金のほうも確認します。

食材の仕入は、業者ごとに締め日と支払日が違います。月末締め翌月末払いの業者もあれば、都度払いの業者もあります。

この支払日が、キャッシュレスの入金日より前に来ると、そこで穴が開きます。

家賃は多くの場合、前月末または当月初めの支払いです。売上が悪い月でも、同じ額が出ていきます。

比較:使える手段を安い順に

順番は費用の安い順です。

1. 支払条件の相談(費用ゼロ)

まずここです。相談するだけなら費用はかかりません。

食材業者へ:

いつもお世話になっております。◯◯の◯◯です。今月分のお支払いについてご相談がございます。恐れ入りますが、◯日までお待ちいただくことは可能でしょうか。

家主・管理会社へ:

恐れ入ります。家賃のお支払いについてご相談させてください。◯月分を◯日までお待ちいただくか、あるいは分割でお納めする形をご相談できませんでしょうか。

「払えない」ではなく「いつまでに、いくら払える」と具体的に伝えてください。

家賃が払えないときの対処を読む

2. マル経融資(無担保・無保証人)

商工会議所・商工会の経営指導を受けている小規模事業者向けの制度です。

無担保・無保証人で、金利は年2.70%です(2026年8月3日現在・特別利率F。出典: 日本政策金融公庫「マル経融資」・2026年8月7日確認)。

ただし経営指導を受けてから申し込むまでに時間がかかります。

3. 公庫の一般貸付

より大きな額が必要な場合です。

運転資金の融資限度額は4,800万円、返済期間は5年以内(特に必要な場合7年以内、うち据置期間1年以内)です(出典: 日本政策金融公庫「一般貸付」・2026年8月7日確認)。

据置期間があるという点が重要です。最初の1年は元金の返済を据え置ける形にできれば、その間に立て直せます。

4. 振興事業貸付(飲食店ならではの制度)

あまり知られていない制度です。

飲食店営業は、生活衛生関係の事業として振興事業貸付の対象になります。

対象は「生活衛生関係の事業を営む方であって、振興計画の認定を受けた生活衛生同業組合の組合員」です(出典: 日本政策金融公庫「振興事業貸付」・2026年8月7日確認)。

条件を、一般貸付と比べてみてください。

項目一般貸付振興事業貸付
運転資金の限度額4,800万円5,700万円
運転資金の返済期間5年以内10年以内
据置期間1年以内2年以内
設備資金の限度額4,800万円1億5,000万円(飲食店営業)

返済期間が倍、据置期間も倍です。

条件は、生活衛生同業組合の組合員であることです。組合に加入していない場合は、まず加入の相談から始まります。

すぐには使えませんが、月々の返済負担を軽くしたい場合には検討する価値があります。

公的融資とは(公庫・制度融資・マル経)

据置期間があるかどうかで、立て直せる時間が変わります。

条件:飲食店で売掛金の資金化は使えるか

正直に申し上げます。

一般のお客様からの売上には売掛金がないため、対象になりません。

ただし、次のような取引があれば対象になり得ます。

  • ケータリング・仕出し——法人や施設への請求書払い
  • 宴会の請求書払い——企業からの後払い
  • 社員食堂の運営受託——委託元への請求
  • 卸売——他店や小売への商品供給

まず自店に請求書ベースの取引があるかを確認してください。

該当する取引があれば、その分を入金日より前に現金にできます。

手数料の相場と年利換算を読む

請求書のカード払いという選択肢もあります

仕入代金や家賃を、クレジットカードで支払える形に変える方法です。

代行会社が先に立て替え、自社はカードの引き落とし日に払います。手数料は3%前後で、支払いを1〜2か月遅らせる効果があります。

請求書のカード払いとは

手順:まず数字を1枚にする

どの手段を選ぶにせよ、これが要ります。

今後3か月について、次を並べてください。

  1. 現金売上——当日入金
  2. キャッシュレスの入金——事業者ごとの入金日で書く
  3. 請求書ベースの入金——ケータリング等があれば
  4. 出ていくお金——仕入・家賃・人件費・光熱費
  5. 月末に残る額

2を「売上が立った日」で書かないでください。実際に口座に入る日で書きます。

この1枚を作ると、いつ・いくら足りないかが数字で出ます。

資金繰り診断で不足額を計算する

注意点:気をつけること

  • 入金の早期化オプションを常用する——費用が固定費として積み上がります
  • 毎月続けて資金化する——同じ理由で、利益を削り続けます
  • 「飲食店OK・審査なし」をうたう業者——貸金業の登録がない違法な貸付のおそれがあります

契約書に返済・利息・担保・保証人といった言葉が入っている場合、実質的には貸付にあたる可能性があります。金融庁も注意喚起を出しています。

違法な業者の見分け方を読む

条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。

旅館・ホテルの資金繰りを読む

今日やる一歩

このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。

  • 入金日を把握していない——決済事業者の締め日と入金日を今日中に確認する
  • 今月が厳しい——食材業者と家主に、支払いの相談の連絡を入れる
  • まだ数か月は持つ——商工会議所に電話し、マル経融資の相談を始める

現金商売でも、入金と支払いの日がずれれば詰まります。日付を並べるところから始めてください。

業種別の資金繰りを見る

参考にした公的資料

このページは、資金調達の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。融資の条件や利率は変わることがあります。お申し込みの前に、必ず各機関の公式サイトでご確認ください。

よくある質問

飲食店は現金商売なのに、なぜ資金が足りなくなりますか?

入金と支払いの時間差があるためです。キャッシュレス決済の割合が上がり、売上が当日入金ではなくなりました。一方で食材の仕入代金・家賃・人件費は決まった日に出ていきます。売上があっても、口座の残高が支払日に足りないという状態が起きます。

飲食店が使える公的融資はありますか?

あります。日本政策金融公庫の一般貸付は、運転資金の融資限度額が4,800万円、返済期間は5年以内(特に必要な場合7年以内)です。また商工会議所の経営指導を受けている小規模事業者には、無担保・無保証人のマル経融資があり、金利は年2.70%です(2026年8月3日現在・特別利率F)。

売掛金がない飲食店でも資金化はできますか?

ケータリング、宴会の請求書払い、法人契約の社員食堂など、請求書を出している取引があれば対象になり得ます。一方、一般のお客様からの売上には売掛金がないため、対象になりません。まず自店に請求書ベースの取引があるかを確認してください。

何から手を付ければよいですか?

まず家賃と仕入の支払い条件を相談することです。費用がかかりません。次に公的融資、それでも間に合わなければ売掛金の資金化という順番になります。時間があるほど安い手段が使えます。

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