代金の減額を求められたとき|取適法で禁止された行為
更新日: 2026-08-07
この記事でわかること
- 取適法では発注後の一方的な減額が禁止されていること
- 2026年1月に下請法が取適法に変わったこと
- 断るときの伝え方と、相談できる窓口
- 減額に応じてしまった場合の資金繰りへの影響
- 自社の取引が対象になるかの確認方法
目次
納品したあとで、代金を減らしてほしいと言われた。
これは、法律で禁止されている場合があります。
このページでは、その根拠と、断り方、そして資金繰りへの対処を整理します。
まず結論:一方的な減額は禁止されています
令和8年(2026年)1月1日から、下請法は「取適法(トリテキ法)」に変わりました。
正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です(出典: 公正取引委員会「取適法・振興法」・2026年8月7日確認)。
取適法では、受託する側の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた代金を減額することが禁止されています。
つまり「あとから安くしてほしい」は、原則として通らない話です。
名目を変えても同じです
次のような形で求められることがあります。
- 協賛金・協力金
- 販売奨励金
- 歩引き
- キャンペーンの負担
名目が何であっても、実質的に発注時の代金を下回る額しか受け取れない形であれば、問題になり得ます。
手段の名前ではなく、最終的にいくら受け取れるかで判断してください。
条件:自社の取引が対象になるか
すべての取引が対象になるわけではありません。
取適法は、委託する側と受託する側の資本金などによって対象が決まります。
まず自社の取引が対象になるかを確認してください。
判断に迷う場合、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に問い合わせることができます。
対象外だった場合でも、交渉そのものは可能です。「この金額では原価を割ります」という説明は、法律と関係なく成り立ちます。
手順:断るときの伝え方
いきなり法律を持ち出すのは、おすすめしません。
関係が壊れると、次の発注がなくなります。
段階を踏んでください
第1段階:事実の説明から入る
いつもお世話になっております。ご相談いただいた金額についてですが、恐れ入りますが当社の原価を下回る水準となってしまいます。お約束の金額でお願いできませんでしょうか。
第2段階:根拠に触れる
恐れ入ります。発注後の代金の変更につきましては、取適法でも制限があるものと承知しております。当初お約束いただいた金額でお願いできればと存じます。
「法律違反です」ではなく「制限があると承知しております」という言い方です。
第3段階:窓口に相談する
それでも応じてもらえない場合、公的な相談窓口があります。
公正取引委員会や中小企業庁が窓口を設けています。相談したことが相手に伝わらない形での相談も可能です。
手順:記録を残してください
相談するにせよ、しないにせよ、これは必ずやってください。
- 発注書・注文書——当初の金額が分かるもの
- やり取りのメール——減額を求められた記録
- 納品書・検収書——履行した事実
- 実際に入金された額——通帳の記録
口頭でのやり取りしかない場合、あとから証明できません。
電話で減額を求められたら、その日のうちにメールで確認を送ってください。
本日お電話でご相談いただいた件につきまして、念のため確認させていただきます。当初◯◯円でお約束いただいた◯◯について、◯◯円へのご変更というご相談と理解しております。相違ございませんでしょうか。
比較:資金繰りへの対処
すでに応じてしまった場合、あるいは交渉中で入金が遅れている場合です。
まず不足額を計算してください。
当初の金額 - 実際に入る額 = 不足額
そのうえで、費用の安い順に手段を当てます。
1. 支払条件の交渉(費用ゼロ)
自社が払う側の条件を見直します。
2. 公的融資(年1〜3%程度)
日本政策金融公庫の一般貸付を使います。運転資金の融資限度額は4,800万円、返済期間は5年以内(特に必要な場合7年以内)です。
出典は日本政策金融公庫「一般貸付」です(2026年8月7日確認)。
3. 売掛金の資金化
これは借入ではなく、審査で主に見られるのは取引先の支払い能力です。
注意点:次から起きないようにする
減額を求められやすい状態には、共通点があります。
- 発注書がない——金額が書面で残っていない
- 仕様が曖昧——「思っていたものと違う」と言われる余地がある
- 1社への依存度が高い——断れない関係になっている
発注書と請書をそろえる
金額・数量・納期・仕様を書面で残してください。
取適法でも、書面の交付が求められています。受け取っていない場合、それ自体を相談の材料にできます。
取引先を分散する
売上の半分以上を1社に頼っている状態が、いちばん危険です。
断れない関係では、法律があっても使えません。
種類:減額以外にも禁止されている行為
取適法では、代金の減額以外にも制限があります。
次のような行為が対象として挙げられています。
- 受領の拒否——発注したものを受け取らない
- 支払いの遅延——定めた期日に支払わない
- 返品——理由なく返す
- 買いたたき——著しく低い代金を不当に定める
- 物の購入・役務の利用の強制——不要なものを買わせる
心当たりがある場合、それも相談の材料になります。
「うちだけが我慢しているのではないか」と感じたら、一度窓口に聞いてみてください。
相談は匿名でもできます
相談したことが相手に伝わることを心配される方が多いはずです。
公正取引委員会や中小企業庁は、事業者からの情報提供を受け付ける窓口を設けています。
まず「こういう場合はどうなりますか」という一般的な質問から始めることもできます。
手順:原価を把握しておく
交渉の場で最も効くのは、数字です。
「原価を割ります」と言うためには、原価を把握している必要があります。
案件ごとに、次を計算してください。
- 材料費・仕入
- 直接の人件費——その案件に何時間かかったか
- 外注費
- 1と2と3の合計——これが直接の原価
提示された金額がこれを下回るなら、受けるほど損をします。
感覚ではなく数字で言えると、交渉の説得力がまったく変わります。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- いま求められている——電話でのやり取りをメールで確認し、記録に残す
- すでに応じた——不足額を計算し、公庫に相談の電話をする
- 発注書がない取引がある——次の案件から、書面で金額を確定させる
断る根拠があることを知っているだけで、交渉の立ち位置が変わります。
参考にした公的資料
- 公正取引委員会「取適法・振興法」——令和8年1月1日施行・規制の内容(2026年8月7日確認)
- 公正取引委員会「取適法について」——法律の正式名称と施行日(2026年8月7日確認)
- 日本政策金融公庫「一般貸付」——運転資金4,800万円・5年以内(2026年8月7日確認)
このページは、資金調達と取引条件の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。取適法の対象となるかどうか、個別の行為が違反にあたるかどうかは、取引の内容と当事者の資本金等によって判断されます。公正取引委員会・中小企業庁の窓口へご確認ください。
よくある質問
発注後に代金を減らされるのは違法ですか?
取適法の対象となる取引であれば、受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに発注時に定めた代金を減額することは禁止されています。2026年1月1日から下請法は取適法(トリテキ法)に変わり、規制の内容も拡充されています。まず自社の取引が対象になるかを確認してください。
協賛金や値引きという名目ならよいのですか?
名目が何であっても、実質的に発注時の代金を下回る額しか受け取れない形であれば、減額として問題になり得ます。手段の名前ではなく、最終的にいくら受け取れるかで判断してください。判断に迷う場合は公正取引委員会や中小企業庁の窓口に相談できます。
断ると取引を切られそうです。どうすればよいですか?
いきなり法律を持ち出すのではなく、相談として伝えることをおすすめします。「この金額では原価を割ります」という事実の説明から入り、根拠として法律に触れる形です。それでも応じてもらえない場合、公的な相談窓口があります。
すでに減額に応じてしまいました。資金繰りをどうすればよいですか?
まず不足額を計算し、費用の安い順に手段を当ててください。支払条件の交渉、公的融資、売掛金の資金化という順番です。同時に、次の取引から同じことが起きないよう、発注書と請書で金額を明確にする形を整えてください。