自己資金なしで開業できるか|平均279万円

更新日: 2026-08-29

この記事でわかること

  • 公庫の新規開業・スタートアップ支援資金のページには、自己資金の要件が記載されていません
  • 2025年度新規開業実態調査では、開業時の自己資金は平均279万円、調達額の22.9%です
  • 開業時の資金調達額は平均1,219万円で、金融機関等からの借り入れは平均827万円です
  • 公庫の創業の手引が示す、黒字化までの平均6.4ヵ月という運転資金の見積り方を確認できます
  • 調査の対象が、公庫から融資を受けた開業後1年以内の企業である点まで含めて数字を読みます
目次

自己資金なしで開業を考えるとき、確認したい数字は、公庫の制度ページにおける自己資金要件の記載と、調査に表れた自己資金の平均額です。

この二つは、同じ意味ではありません。制度の記載と開業企業の実態を分けると、準備すべきことが見えやすくなります。

まず結論:制度に要件はなくても、実態の平均は279万円です

確認先は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。このページには、自己資金の要件が記載されていません。ただし、これは自己資金なしでも必ず融資される、という意味ではありません。

一方、日本政策金融公庫総合研究所の調査では、開業時の自己資金は平均279万円でした。平均調達額に占める割合は、22.9%です。

ここで押さえる結論は明確です。制度ページに要件の記載がない事実と、調査回答企業が実際に用意した平均額は分けて読みます。どちらか一方だけでは、自分の不足額を判断できません。

開業時の資金調達額は、平均1,219万円です。そのうち、金融機関等からの借り入れは平均827万円でした。自己資金だけで全額を用意した結果ではないことも分かります。

まず自分で必要な資金の合計と現在用意できる自己資金を決め、その差額を確認してから、制度の対象や限度額を照らします。

調達額の2割強が自己資金、7割弱が金融機関等からの借り入れです。

仕組み:開業時の1,219万円は、どこから来ているか

調査が示した開業時の資金調達額は、平均1,219万円です。最大の内訳は、金融機関等からの借り入れ827万円で、全体の67.9%を占めます。

次が自己資金279万円で、22.9%です。この二つを合わせると、平均調達額の90.7%になります。資金計画を考える際は、まず借り入れと自己資金を分けて見ると整理できます。

残る内訳は、配偶者・親・兄弟・親戚から平均53万円です。友人・知人等からは平均41万円、その他は平均19万円でした。

調達先平均額平均調達額に占める割合
金融機関等からの借り入れ827万円67.9%
自己資金279万円22.9%
配偶者・親・兄弟・親戚53万円
友人・知人等41万円
その他19万円

金融機関等には、日本政策金融公庫と民間金融機関が含まれます。地方自治体の制度融資も同じ区分です。公庫・地方自治体以外の公的機関も含まれます。

また、親族と友人・知人等の金額には、借り入れと出資の両方が含まれます。表の金額をすべて同じ性質の資金として扱わないことが大切です。

開業資金はいくら必要か(平均975万円・中央値600万円)

条件:公庫のページに自己資金の要件は書かれていません

確認する制度は、「新規開業・スタートアップ支援資金」です。利用できる方には、新たに事業を始める方が含まれます。事業開始後おおむね7年以内の方も対象として案内されています。

融資限度額は7,200万円です。設備資金の返済期間は20年以内で、うち据置期間は5年以内です。運転資金は10年以内で、うち据置期間は5年以内とされています。

同制度のページには、自己資金の要件は記載されていません。確認できるのは、あくまで「記載がない」という点です。自己資金がなくても借りられるとの断定には置き換えないでください。

公庫の「創業融資のご案内」も確認できます。対象は、新たに事業を始める方、または税務申告を2期終えていない方です。

この案内には、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できるとあります。金利は原則として0.65%引下げです。雇用の拡大を図る場合は、0.9%引下げと案内されています。

「原則として」という条件を含め、ページに書かれた表現のまま読みましょう。制度の対象、限度額、返済期間を確認し、自分の計画と照らす順番です。

比較:自己資金以外の調達先は3つに分かれます

自己資金で足りない部分を考えるときは、調査の内訳を三つに整理できます。一つ目は、金融機関等からの借り入れです。平均827万円で、平均調達額の67.9%を占めました。

二つ目は、身近な人からの資金です。配偶者・親・兄弟・親戚は平均53万円でした。友人・知人等は平均41万円で、どちらにも借り入れと出資が含まれます。

三つ目は、調査上のその他19万円です。この区分について、出典は具体的な内訳を示していません。ここでは新たな調達方法を推測せず、その他という区分のまま扱います。

比較の目的は平均額に自分を合わせることではなく、不足額をどの区分で埋めるかを混同せずに決めることです。

金融機関等からの借り入れを検討するなら、公庫の融資のほかに、信用保証協会の保証を使う道もあります。身近な人からの資金を見込むなら、借り入れか出資かを分けて整理します。公庫の手引は、親や兄弟、知人、友人等からの借入について、創業計画を説明して賛同を得ることができれば、資金を融通してもらえる可能性ありと書いています。

自己資金は、調査では平均279万円でした。これは目標額や必要額を一律に定める数字ではなく、回答企業の平均です。自分の必要額との差を考える手がかりとして使います。

信用保証協会とは(担保も実績もない会社が借りる仕組み)

費用:黒字化までの運転資金を見込めているか

自己資金の話は、必要額の話と切り離せません。公庫の「創業の手引」は、資金計画をいくら必要で、その資金をどう調達するのかを検討する計画と定義しています。

運転資金のチェックポイントとして挙げられているのが、次の一文です。事業が黒字化し資金繰りが安定化するまでの運転資金を見積っているか

同じ手引には、黒字化にかかった期間は平均6.4ヵ月という数字も載っています。出典は日本公庫「2025年版新規開業白書」です。開業した日から黒字になるまで、平均で半年強かかったことになります。

つまり自己資金が足りないと感じるとき、不足しているのは設備の代金だけとは限りません。黒字化までの数か月を持ちこたえる運転資金が抜けている場合があります。手引はもう一つ、販売先からの入金条件と仕入・外注先への出金条件を踏まえて運転資金を見積るよう促しています。

設備資金の側にも、費用を下げる観点が示されています。取得予定の設備について複数社から見積を取得し金額を吟味する。中古品の購入などにより初期投資を抑えられないかを考える。購入だけでなく、リースやレンタルを検討する。

自己資金そのものについては、手引に自己資金は着実に蓄積することが重要と書かれています。理由も添えられていて、自己資金の割合が高いほど借入の割合は低くなり、余裕をもった資金繰りが可能になる、という説明です。

不足額をどこで埋めるかは、窓口に行く前に決めておく論点です。

手順:足りない分をどこで埋めるかを先に決めます

最初に、開業に必要と考える資金の合計を書き出します。次に、現在用意できる自己資金を分けて記録し、二つの差を不足額として把握します。

続いて、不足額をどの調達先で埋めるか決めます。公庫を検討するなら、利用対象と融資限度額を確認してください。

身近な人からの資金を含める場合は、借り入れと出資を区別します。調査の53万円と41万円には、両方が含まれているためです。

公庫の「創業の手引」には、資金計画を書き込む様式が載っています。左に必要な資金として設備資金と運転資金を書きます。右には調達の方法として、自己資金、親や兄弟・知人・友人等からの借入、日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入、他の金融機関等からの借入を並べます。様式には金額は一致しますと注記されています。左右がそろわない計画は、その時点で計画として成立していないということです。

進め方を並べると、次の順番です。

  1. 必要な資金の合計を決める(黒字化までの運転資金を含める)
  2. 用意できる自己資金を分ける
  3. 差額を不足額として確認する
  4. 公庫、身近な人からの資金、その他に分ける
  5. 対象、限度額、返済期間を確認する
  6. 必要な資金と調達の方法を左右に並べ、合計を一致させる

平均279万円を、そのまま自分の必要額にする必要はありません。重要なのは、必要額と用意できる額の差を曖昧にしないことです。差額が決まれば、確認すべき制度と数字を絞れます。

創業1年未満で資金が尽きそうなとき

注意点:この平均値は「融資を受けて開業した企業」の数字です

平均279万円を読む際は、調査対象の範囲を確認してください。この調査は、2025年8月時点で実施され、2025年12月5日に公表されました。

対象は、日本政策金融公庫国民生活事業が融資した企業です。融資の時期は、2024年4月から同年9月まででした。そのうち、融資時点で開業後1年以内の企業8,517社が対象です。不動産賃貸業は除かれています。

回収数は2,165社で、回収率は25.4%でした。開業時の経営形態は、個人企業57.0%、法人企業43.0%です。

つまり、この平均は、すべての開業者を集計した数字ではありません。公庫から融資を受けた企業への調査結果です。この範囲を外して、開業者全体の平均と断定しないようにします。

また、平均279万円は、各社が必ず用意した金額でもありません。回答企業の自己資金を平均した結果として読みます。融資の可否を示す基準でもありません。

制度ページに自己資金要件の記載がないことも、同じ注意が必要です。記載がない事実から、融資結果を決めつけることはできません。制度の説明と調査の平均を別々に確認する姿勢が大切です。

すでに事業を始めていて、売掛金の入金待ちで資金が足りない場合には、次の方法もあります。

今日やる一歩

今日やることは、必要額、自己資金、不足額の三つを一枚に並べることです。まだ金額が決まっていない欄もあります。その欄は、未定のまま区別します。

次に、不足額の調達先を選びます。公庫を確認するなら、対象が新たに事業を始める方か、事業開始後おおむね7年以内の方かを見ます。

運転資金の欄には、黒字化までの月数を書き添えます。手引が示す平均は6.4ヵ月でした。自分の商売で何か月かかりそうかを、根拠つきで書いてみてください。

最後に、必要な資金と調達の方法を左右に並べ、合計を一致させるところまで進めます。平均額を眺めて終わらせず、自分の不足額を数字で確定させることが目的です。

参考にした公的資料

本記事は公的機関が公表している情報をもとにした一般的な解説であり、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。

よくある質問

自己資金なしでも公庫の融資を必ず受けられますか?

必ず受けられるとはいえません。新規開業・スタートアップ支援資金のページには、自己資金の要件が記載されていないという事実を確認できます。

開業時の自己資金は平均いくらですか?

2025年度新規開業実態調査では、自己資金は平均279万円で、平均調達額に占める割合は22.9%です。

自己資金以外にどのような調達先がありますか?

調査では、金融機関等からの借り入れ、配偶者・親・兄弟・親戚、友人・知人等、その他が示されています。

新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額はいくらですか?

融資限度額は7,200万円です。設備資金の返済期間は20年以内、運転資金は10年以内と案内されています。

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