創業1年未満で資金が尽きそうなとき|決算書なしの手
更新日: 2026-08-07
この記事でわかること
- 決算書がない時期は、銀行の通常の融資が通りにくいこと
- 公庫の創業融資は2025年3月に名称が変わっていること
- 限度額は7,200万円で、据置期間を5年以内で設定できること
- 設備は借り、運転資金は入金を早めて作るという分け方
- 創業期に売掛金があるなら、決算書を見ない手段が使えること
目次
事業を始めて数か月。売上は立ち始めたのに、手元の資金が減っていく。
銀行に相談しても、良い返事がもらえない。
このページでは、決算書がまだない時期に、何ができるかを説明します。
最初に、なぜ銀行が貸してくれないのかを説明します。次に、この時期に使える公的な制度をご案内します。そのあと、借りずに現金を作る方法を並べます。最後に、次の資金が尽きる前にやることに触れます。
仕組み:銀行が貸してくれない理由
まず、原因を正しく理解しておきます。あなたの事業が評価されていないわけではありません。
銀行の審査は、過去の決算書を土台にしています。
売上がいくらで、利益がどれだけ出て、資産と負債がどうなっているか。それを2〜3期分見て判断します。
創業1年未満では、その材料がまだ存在しません。
だから「貸せない」のではなく「判断できない」というのが実態に近い状態です。
この時期の正しい進め方
材料がないなら、材料を必要としない制度を使います。
創業者向けの公的な制度は、まさにそのために用意されています。
制度:公庫の創業融資
日本政策金融公庫には、創業者向けの制度があります。
2025年3月に、名称が「新規開業資金」から「新規開業・スタートアップ支援資金」へ変更されました。古い名前で検索していると見つからないことがあります。
内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
| 返済期間(設備資金) | 20年以内 |
| 返済期間(運転資金) | 10年以内 |
| 据置期間 | いずれも5年以内 |
(出典: 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」・2026年8月7日確認)
据置期間が、この制度のいちばんの価値です
見落とされやすいのがここです。
据置期間とは、元金の返済を待ってもらえる期間のことです。その間は利息だけを払います。
創業期は、売上が軌道に乗るまで時間がかかります。その間に元金の返済まで始まると、立ち上がる前に資金が尽きます。
据置期間を設定できれば、事業が回り始めるまでの時間を確保できます。
申し込むときに、据置期間についても相談してください。言わなければ設定されないことがあります。
自己資金について
公庫の該当ページ本文には、自己資金の額に関する要件の記載はありません(2026年8月7日時点)。
ただし実際の審査では、事業計画の確からしさと、資金の使いみちが問われます。
何にいくら使うのかを、紙で説明できるように準備してください。
商工会議所も窓口になります
商工会議所や商工会でも、経営の相談を受け付けています。
マル経融資という制度もあります。無担保・無保証人で、金利は年2.70%です(2026年8月3日現在・特別利率F)。融資限度額は2,000万円、返済期間は10年以内で据置期間は2年以内です(出典: 日本政策金融公庫「マル経融資」・2026年8月7日確認)。
ただし、原則1年以上その地域で事業を行っていることが条件です。創業直後は対象外になりますが、1年を超えたら選択肢に入ります。
比較:借りずに現金を作る
融資は入金まで時間がかかります。早くて2週間、通常は1か月前後です。
その間をどうつなぐかも考えておく必要があります。
入金を早める
いちばん確実です。しかも費用がかかりません。
創業期は、取引条件がまだ固まっていないことが多いはずです。だからこそ、いま交渉する価値があります。
恐れ入りますが、お支払いのサイトについてご相談させてください。当社は創業間もないため、月末締めの翌月末払いでお願いできないでしょうか。
条件が固まる前のほうが、変えやすくなります。
売掛金を資金化する
取引先に出した請求書があれば、入金日を待たずに現金にできます。
創業期にとって重要なのはここです。借入ではないため、審査で主に見られるのは自社の決算ではなく、取引先の支払い能力です。
決算書がなくても、取引先がしっかりした会社であれば通ることがあります。この時期に使える数少ない手段の1つです。
個人事業主で金額が小さい場合は、少額から使えるサービスもあります。
ただし費用は重くなります。公的融資が下りるまでの、つなぎとして使ってください。
手順:資金が尽きる前にやること
いちばん危ないのは、残高が減っていることに気づくのが遅れることです。
あと何か月持つか計算する
計算式はこれだけです。
現在の預金残高 ÷ 毎月必ず出ていく額 = 持ちこたえられる月数
3か月を切ったら、その時点で公庫へ相談に行ってください。
融資は申込から入金まで1か月前後かかります。1か月分を切ってから動いても間に合いません。
使いみちを分けて考える
創業期の資金は、性質で分けると判断しやすくなります。
- 設備(機械・車両・内装)——借りる。返済期間を長く取れます
- 運転資金(仕入・人件費)——入金を早めることで減らせます
設備を運転資金で買うと、資金繰りが一気に苦しくなります。設備は融資で、期間を長く取ってください。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- 残高が3か月分を切っている——公庫の支店に電話し、相談の予約を取る
- まだ余裕がある——あと何か月持つかを計算する。15分で終わります
- 今月が厳しい——手元の請求書を撮影し、資金化の見積もりを依頼する
創業期は、動くのが早いほど選択肢が多く残ります。
参考にした公的資料
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」——限度額7,200万円・返済期間・据置期間5年以内(2026年8月7日確認)
- 日本政策金融公庫「マル経融資」・金利情報——限度額2,000万円・特別利率F 年2.70%(2026年8月3日現在の利率/2026年8月7日確認)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」——実質的な貸付への注意(2026年8月7日確認)
このページは、資金調達と公的制度の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。融資の可否や条件は審査によって決まります。お申し込みの前に、必ず各機関の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
創業1年未満でも公庫から借りられますか?
日本政策金融公庫には創業者向けの制度があります。2025年3月に「新規開業資金」から「新規開業・スタートアップ支援資金」へ名称が変更されました。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内で、いずれも据置期間を5年以内で設定できます。
自己資金がないと借りられませんか?
公庫の該当ページ本文には、自己資金の額に関する要件は記載されていません(2026年8月7日時点)。ただし実際の審査では、事業計画の確からしさや資金の使いみちが問われます。自己資金の有無を含め、条件は支店での相談時にご確認ください。
銀行が貸してくれないのはなぜですか?
決算書がまだ無いためです。銀行の審査は過去の決算内容を土台にします。創業1年未満では判断の材料がないため、通常の融資は通りにくくなります。この時期は、創業者向けの公的な制度や、信用保証協会の創業関連保証を使うのが基本になります。
創業して間もなくてもファクタリングは使えますか?
取引先に出した請求書があれば使える場合があります。借入ではなく、審査で主に見られるのは自社ではなく取引先の支払い能力だからです。決算書がなくても、取引先がしっかりした会社であれば通ることがあります。