資産を売って資金を作る方法|遊休資産とセール&リースバック
更新日: 2026-08-07
この記事でわかること
- 使っていない資産は現金が形を変えたものであること
- 売却は借入ではないため、負債が増えないこと
- セール&リースバックという方法があること
- 売却損・売却益が決算に与える影響
- 手放してはいけない資産の見分け方
目次
使っていない機械がある。乗らなくなった車両がある。
それらは、現金が形を変えたものです。
このページでは、資産から資金を作る方法と、その注意点を整理します。
まず結論:借入ではないので負債が増えません
資産の売却は、資金調達の手段のひとつです。
| 手段 | 貸借対照表への影響 |
|---|---|
| 借入 | 負債が増える/現金が増える |
| 資産の売却 | 資産が入れ替わる(負債は増えない) |
加えて、維持費がかからなくなるという効果もあります。
- 保険料
- 固定資産税・自動車税
- 保管・置き場の費用
- 点検・保守の費用
使っていない資産は、持っているだけで費用が出ていきます。
手順:まず棚卸しをする
何を持っているかを、正確に把握してください。
固定資産台帳を開き、次を確認します。
- いま実際に使っているか
- 今後1年で使う予定があるか
- 担保に入っていないか
- 売るとしたらいくらか
3つ目がとくに重要です。
担保付きの資産は、金融機関の同意なく処分できません。
対象になりやすいもの
- 使っていない機械・設備
- 稼働していない車両
- 倉庫に眠っている在庫
- 使っていない不動産
- ゴルフ会員権など
「いつか使うかもしれない」で置いてあるものが、いちばんの対象です。
種類:セール&リースバックという方法
いま使っている資産でも、資金化できる方法があります。
自社の設備や不動産を売却し、そのまま賃借して使い続ける形です。
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| 売却 | 現金が入る |
| 賃借 | そのまま使い続けられる |
| 毎月 | リース料・賃料を払う |
使いながら資金化できるという点が特徴です。
ただし注意が必要です
毎月のリース料・賃料という固定費が発生します。
長期的には、売却額を上回る支払いになることがあります。
つまり、これは実質的に資金を借りるのと似た性質を持ちます。
判断のときは、次を計算してください。
月々のリース料 × 契約期間 = 支払う総額
この総額と売却額を比べれば、実質的な負担が見えます。
注意点:売ってはいけない資産
次に当てはまるものは、慎重に判断してください。
1. 担保に入っている資産
金融機関の同意なく処分できません。
無断で処分すると、契約違反になります。
2. 許可・認可の要件になっている設備
業種によっては、特定の設備が許可の条件になっています。
売却すると、事業そのものを続けられなくなります。
3. 事業の中核となる資産
売って一時的に資金が入っても、稼ぐ手段を失っては意味がありません。
「今月を越えるために、来月以降の売上を捨てる」ことになっていないかを確認してください。
条件:決算への影響
売却の価格が帳簿の価額を下回れば、売却損が出ます。
利益が減るという意味では、決算に影響します。
ただし説明はできます
金融機関には、次のように説明できます。
使用していない設備を整理し、維持費の削減と財務の圧縮を行いました。売却損は◯◯円計上されておりますが、年間◯◯円の維持費が不要になっております。
「資金繰りに困って売った」ではなく「不要な資産を整理した」という説明です。
実際に維持費が減るのであれば、これは事実の説明です。
税務上の扱いは、必ず顧問税理士にご確認ください。
比較:他の手段との位置づけ
資産の売却は、順番としてはどこに来るか。
| 順番 | 手段 | 費用 |
|---|---|---|
| 1 | 支払条件の交渉 | ゼロ |
| 2 | 遊休資産の売却 | ゼロ(むしろ維持費が減る) |
| 3 | 公的融資 | 年1〜3%程度 |
| 4 | セール&リースバック | リース料の総額次第 |
| 5 | 売掛金の資金化 | 1回1〜20% |
使っていない資産の売却は、2番目に位置します。
費用がかからないどころか、維持費が減るからです。
間に合わない場合
売却には時間がかかります。買い手を探し、価格を決め、引き渡すまで数週間から数か月です。
急ぐ場合は、売掛金の資金化になります。
これは借入ではなく、審査で主に見られるのは取引先の支払い能力です。
ただし費用は重くなります。手数料10%を入金まで30日の請求書に使えば、年利に直しておよそ120%相当です(目安)。
注意点:気をつけること
- 担保の有無を確認せずに売る——契約違反になります
- 急いで安く手放す——複数社に査定を取ってください
- リース料の総額を計算しない——実質的な負担が見えません
契約書に返済・利息・担保・保証人といった言葉が入っている場合、実質的には貸付にあたる可能性があります。金融庁も注意喚起を出しています。
手順:売却の進め方
安く手放さないための段取りです。
1. 複数社に査定を取る
1社だけの提示額で決めないでください。
機械・車両・不動産のいずれも、業者によって評価が違います。
2. 急いでいることを言わない
「今月中に現金が必要」と伝えると、足元を見られます。
売り急いでいる姿勢を見せないでください。
3. 帳簿価額を確認しておく
売却損・売却益がいくら出るかを、事前に把握してください。
決算への影響を知らないまま進めると、あとで税務上の問題に気づくことがあります。
条件:在庫も資産です
設備や不動産だけが対象ではありません。
倉庫に眠っている在庫も、現金が形を変えたものです。
- 型が古くなった商品
- 季節を過ぎた商材
- 動きの止まった部品
値引きしてでも現金に戻すほうが、資金繰りには有利です。
計算してみてください。
仕入10万円の在庫を3割引で売る → 現金7万円が戻る 売れずに1年置く → 現金はゼロのまま、保管の費用もかかる
「損をしたくない」という気持ちが、資金を縛ります。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- 固定資産台帳を見ていない——開いて、使っていないものに印をつける
- 売れそうな資産がある——担保の有無を確認し、複数社に査定を依頼する
- 今月が厳しい——売却は間に合いません。公庫か資金化を検討してください
使っていない資産を持ち続けることには、費用がかかっています。
参考にした公的資料
- 日本政策金融公庫——公的融資の申込先(2026年8月7日確認)
- 中小企業庁「中小企業活性化協議会」——経営改善・事業再生の相談窓口(2026年8月7日確認)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」——実質的な貸付への注意(2026年8月7日確認)
このページは、資金調達の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。売却の税務上の扱いや、担保付き資産の処分の可否は個別の事情によって判断されます。顧問税理士および取引金融機関にご確認ください。
よくある質問
遊休資産を売ると資金繰りはどう変わりますか?
借入ではないため、負債が増えずに現金が増えます。加えて、維持費(保険料・税金・保管費用)が不要になるという効果もあります。売却損が出る場合は決算に影響しますが、資金繰りという観点では前向きな選択です。
セール&リースバックとは何ですか?
自社の設備や不動産を売却し、そのまま賃借して使い続ける方法です。現金が入り、使用も続けられます。ただし毎月のリース料・賃料という固定費が発生し、長期的には売却額を上回る支払いになることがあります。
売却損が出ると決算に不利ですか?
利益が減るという意味では影響します。ただし、使っていない資産を持ち続けても維持費がかかるだけです。金融機関への説明では、遊休資産を整理して財務を軽くしたという説明が成り立ちます。顧問税理士と相談してください。
売ってはいけない資産はありますか?
事業に必要な設備、担保に入っている資産、許可の要件になっている設備です。とくに担保付きの資産は、金融機関の同意なく処分できません。売却を検討する前に、担保の有無を必ず確認してください。