事業者ローンの審査|法人と個人事業主で違う点
更新日: 2026-09-14
この記事でわかること
- 貸金業法13条が、貸金業者に調べさせている返済能力の項目
- 総量規制は個人向けの規制で、法人向けの貸付けは対象外であること
- 個人事業主が年収の3分の1を超えて借りるときに確認される事業の実態と計画
- 年収を証明する書類が必要になる50万円・100万円の線と、信用情報の保有期間
- 契約前に交付される書面と、利息制限法の上限金利
目次
銀行以外で事業資金を借りようとすると、まず気になるのが審査です。何を見られるのか。法人と個人事業主で違いはあるのか。
実は、貸金業者が審査で調べる項目は、貸金業法で決まっています。この記事では、金融庁の解説と条文をもとに、申し込む側が前もって用意できることを整理します。個別の会社の通りやすさは扱いません。
まず結論:調べる項目は、貸金業法13条が決めています
貸金業法第13条第1項は、貸金業者が貸付けの契約を結ぼうとするとき、返済能力に関する事項を調査しなければならないと定めています。条文が挙げる項目は、次の4つです。
- 収入または収益その他の資力
- 信用
- 借入れの状況
- 返済計画
続く第13条の2は、調査の結果、返済能力を超える貸付けと認められる契約は結んではならないとしています。審査は、貸す側の気分で省けるものではありません。法律上の義務です。
ただし、同じ事業者ローンでも、法人と個人事業主では法律のかかり方が違います。違いは大きく3つあります。
- 年収の3分の1までという総量規制がかかるか
- 年収を証明する書類が必要になる金額の線
- 審査で信用情報の使用が義務づけられているか
仕組み:総量規制は、法人向けの貸付けにはかかりません
金融庁の貸金業法のキホンによると、総量規制は平成22年6月18日から実施されています。貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借入れができなくなるという規制です。
適用されるのは、貸金業者から個人が借入れを行う場合です。銀行からの借入れや、法人名義の借入れは対象外とされています。貸金業法Q&Aも、法人向けの貸付けは総量規制の対象外だと明記しています。
理由は、日本貸金業協会の総量規制の解説にあります。法人の経営状態はさまざまです。売上げなどの数値基準で、法人の借入れを一律に過剰貸付けとするのは不適当だ、という説明です。
個人事業主は、扱いが違います。
同じ解説は、担保や保証人の有無、消費目的か事業目的かにかかわらず、個人事業者を含む個人向けの貸付けは、原則として総量規制の対象だとしています。事業資金だから対象外、とはならないわけです。
法人でも、審査そのものがなくなるわけではありません。第13条の返済能力の調査と、第13条の2の過剰な貸付けの禁止は、法人との契約にもかかります。
条件:個人事業主は、事業計画で3分の1を超えられます
とはいえ、個人事業主が年収の3分の1を超えて借りる道は、法令に用意されています。
貸金業法施行規則第10条の23は、総量規制の例外になる契約を並べています。その第4号が、事業を営む個人顧客への貸付けです。要件は2つあります。
- 実地調査や直近の確定申告書の確認などで、事業の実態が確認されていること
- 事業計画・収支計画・資金計画に照らして、返済能力を超えない貸付けと認められること
借りる金額が100万円を超えない場合は、2つ目の計画が「事業の状況、収支の状況及び資金繰りの状況」に置き換わります。
金融庁のQ&Aは、この仕組みを利用者向けに説明しています。計画を出して返済能力があると認められれば、上限金額に特段の制約なく借入れができる。計画に最低限書く事項は、日本貸金業協会の自主規制規則に「借入計画書」という簡素な様式で示されている、という内容です。
ただしQ&Aは、個々の貸金業者の判断で追加の資料を求められることがある、とも書いています。最終的に貸すかどうかは、貸金業者の判断です。
同じ条には、ほかの例外もあります。
第5号は、これから事業を始める人への貸付けです。事業計画・収支計画・資金計画の確認などで、確実に事業に使う資金だと認められることが要件になります。第6号は、金融機関の貸付けまでのつなぎです。その貸付けが確実と認められ、返済期間が1か月を超えないものに限られます。
手順:年収を証明する書類は、金額で要否が変わります
申込みで出す書類にも、条文で決まっている部分があります。
貸金業法第13条第3項は、個人の顧客との契約で一定の金額を超えると、源泉徴収票など資力を明らかにする書面の提出を受けなければならないとしています。金融庁のQ&Aは、その線を次のように説明しています。
- ある貸金業者から50万円を超えて借りるとき
- 他の貸金業者から借りている分も合わせて100万円を超えて借りるとき
どちらかに当てはまれば、年収を証明する書類が必要です。それ以外は、自己申告にもとづいて年収を確認するとされています。
法人と個人事業主を、条文の範囲で並べるとこうなります。
| 項目 | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 総量規制(年収の3分の1) | 対象外 | 原則として対象 |
| 3分の1を超えて借りる | 総量規制がない | 事業の実態と計画を確認 |
| 年収を証明する書類(第13条第3項) | 条文は個人の顧客が対象 | 50万円超・合計100万円超で必要 |
| 信用情報の使用(第13条第2項) | 条文は個人の顧客が対象 | 一部の契約を除き義務 |
法人なら書類が要らない、という意味ではありません。第13条第1項の調査は法人との契約にもかかるので、資力や借入れの状況を示す資料は、法人でも求められると考えておきましょう。
種類:信用情報には、申し込んだ記録も残ります
貸金業法第13条第2項は、個人の顧客と契約するとき、指定信用情報機関が保有する信用情報を使わなければならないと定めています。極度方式の貸付けなど、一部の契約は除かれます。
金融庁のQ&Aも、貸金業者は指定信用情報機関を利用して、借り手の借入残高を把握すると説明しています。
では、何がどのくらい残るのでしょうか。指定信用情報機関の1つ、CICの保有する信用情報のページでは、次のように示されています。
| 情報の種類 | 主な中身 | 保有期間 |
|---|---|---|
| 申込情報 | 照会日・商品名・契約予定額・照会会社名など | 照会日より6ヶ月間 |
| クレジット情報 | 契約内容、貸付日・残高・遅延の有無など | 契約期間中および契約終了後5年以内 |
| 利用記録 | 利用日・利用目的・利用会社名など | 利用日より6ヶ月間 |
申し込んだだけでも、照会された事実は6か月残ります。
短い期間に何社にも申し込む前に、借りる額と返し方を先に決めておくと、申込みの数を絞れます。借入が重なって追加の融資が出ないときの考え方は、別の記事にまとめました。
比較:通ったあとの金利と書面も、法律で決まっています
審査に通ったら、次は条件の確認です。
利息制限法第1条は、利息の上限を元本の額で3段階に分けています。
| 元本の額 | 上限の利率 |
|---|---|
| 10万円未満 | 年2割(20%) |
| 10万円以上100万円未満 | 年1割8分(18%) |
| 100万円以上 | 年1割5分(15%) |
上限を超える利息の契約は、その超過部分について無効です。100万円以上を借りるなら、上限は年15%になります。
契約の前には、書面の交付もあります。貸金業法第16条の2は、貸金業者が契約を結ぶまでに、内容を説明する書面を渡さなければならないと定めています(極度方式の契約を除く)。書面で明らかにする事項は、次のとおりです。
- 貸金業者の商号・名称と住所
- 貸付けの金額と貸付けの利率
- 返済の方式、返済期間と返済回数
- 賠償額の予定(違約金を含む)の定めがあるときは、その内容
書面の利率と返済回数から、毎月の返済額を自分で計算してから署名しましょう。
注意点:「審査なし」をうたう相手は、法律の決まりと合いません
ここまで見たとおり、貸金業者には契約を結ぶたびに返済能力を調べる義務があります。「審査なし」と広告する相手は、この決まりと合わないことになります。
申し込む前に、相手が登録を受けた貸金業者かを確かめてください。金融庁の登録貸金業者情報検索では、登録番号や所在地などから検索できます。
今日やる一歩
今日は、借りたい金額を1つ決めて、50万円と100万円の線のどちら側かを確かめてください。
個人事業主で、借入残高が年収の3分の1を超えそうなら、直近の確定申告書と、事業・収支・資金の計画をそろえます。100万円以下なら、計画に代えて、事業・収支・資金繰りの状況が分かる書面を出す形も認められています。
法人なら、申し込む先の登録番号を金融庁の検索で照合するところから始めましょう。
参考にした公的資料
- 金融庁「貸金業法のキホン」
- 金融庁「貸金業法Q&A」
- e-Gov法令検索「貸金業法」
- e-Gov法令検索「貸金業法施行規則」
- e-Gov法令検索「利息制限法」
- 日本貸金業協会「お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)」
- CIC「CICが保有する信用情報」
- 金融庁「登録貸金業者情報検索」
このページは資金調達の判断材料をお伝えするものであり、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。制度や条件は変わることがあります。実際のお手続きの前に、必ず各機関・各社の公式サイトでご確認ください。
よくある質問
事業者ローンの審査では、何を調べられますか?
貸金業法第13条第1項は、貸金業者が貸付けの契約を結ぼうとするとき、顧客等の収入又は収益その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画などの返済能力に関する事項を調査しなければならないと定めています。
法人の借入れにも、年収の3分の1の総量規制はかかりますか?
かかりません。金融庁の貸金業法Q&Aは、法人向けの貸付けは総量規制の対象外と説明しています。総量規制が適用されるのは、貸金業者から個人が借入れを行う場合です。
個人事業主は、年収の3分の1を超えて借りられますか?
条件を満たせば可能です。金融庁のQ&Aは、事業・収支・資金計画を提出し、返済能力があると認められれば上限金額に特段の制約なく借入れができるとしています。借入金額が100万円以下なら、状況が確認できる書面で代えられます。
申し込んだ記録は、信用情報にどのくらい残りますか?
指定信用情報機関のCICは、新規申込みで登録される申込情報の保有期間を照会日より6ヶ月間としています。契約内容や支払状況を表すクレジット情報は、契約期間中および契約終了後5年以内です。