売掛先が倒産したとき|無担保の共済と回収の手順
更新日: 2026-08-07
この記事でわかること
- 経営セーフティ共済なら、無担保・無保証人で借りられること
- 借りられる額は「回収できない売掛金」と「掛金総額の10倍」の少ないほう
- 借りると掛金の10分の1が戻らなくなること
- 取引先が倒産していなくても借りられる一時貸付金があること
- 1社への依存度を下げるための、今日からできること
目次
取引先の倒産を知ったとき、頭に浮かぶのは2つだと思います。あの売掛金はどうなるのか。今月の支払いはどうするのか。
このページでは、その2つに、何をどの順番でやるかを説明します。
最初に、いま使える制度を確認します。次に、その制度の落とし穴を説明します。そのあと、加入していない場合の手段をお示しします。最後に、同じことが起きないための備えに触れます。
まず結論:加入していれば使える制度がある
先に結論です。
経営セーフティ共済に加入していれば、無担保・無保証人でお金を借りられます。正式には中小企業倒産防止共済といいます。
中小機構は、無担保・無保証人で掛金の10倍まで借入れが可能と説明しています(出典: 中小機構の案内・2026年8月7日確認)。
借りられる額は、次の2つのうち少ないほうです。
| 比べるもの | 内容 |
|---|---|
| 回収が困難になった売掛金債権等の額 | 実際に回収できなくなった金額 |
| 納付された掛金総額の10倍 | 最高8,000万円まで |
つまり、毎月2万円を3年積み立てていれば掛金総額は72万円です。その10倍は720万円になります。売掛金が500万円なら、少ないほうの500万円が上限です。
注意点:この制度には落とし穴が1つある
ただし、知らずに借りると損をする点があります。
共済金の貸付けを受けると、貸付額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅します。中小企業庁の案内にそう記されています(出典: 中小企業庁「中小企業倒産防止共済制度について」・2026年8月7日確認)。
具体的に言います。500万円を借りると、積み立てた掛金のうち50万円が戻ってこなくなります。
これは利息ではありません。積立金そのものが減ります。
だから判断が必要です。いま500万円が要るのか。それとも300万円で足りるのか。借りる額が小さいほど、失う掛金も小さくなります。
必要な額を先に計算してから申し込んでください。
種類:取引先が倒産していなくても借りられる一時貸付金
もう1つ、知られていない制度があります。
一時貸付金といいます。取引先が倒産していなくても、解約手当金の範囲内で臨時に事業資金を借りられます(出典: 中小機構「一時貸付金制度」・2026年8月7日確認)。
条件と内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 借入限度額 | 最低30万円〜最高760万円(5万円単位) |
| 貸付利率 | 年0.9%(令和6年4月1日時点。金融情勢で変動) |
| 条件 | 加入後12か月経過、かつ納付月数12か月以上 |
| 担保・保証人 | 不要 |
| 使いみち | 運転資金・設備資金などの事業資金 |
年0.9%は、他のどの手段より安い水準です。共済に入っているなら、まずここを確認してください。
比較:加入していない場合の手段
いま加入していなければ、この制度は使えません。ここは正直にお伝えします。
その場合に取れる手は3つです。
ほかの売掛金を資金化する
倒産した取引先以外に、請求書はありませんか。
あるなら、それを買い取ってもらって入金日より前に現金にできます。借入ではないため、審査で主に見られるのは自社ではなく、その取引先の支払い能力です。
1つ注意があります。倒産した会社に対する売掛金は、買い取ってもらえません。回収できる見込みがないためです。資金化できるのは、健全な取引先の分だけです。
公的融資に相談する
金利は年1〜3%程度です。取引先の倒産という事情は、審査で説明しやすい部類に入ります。
ただし入金まで早くて2週間、通常は1か月前後かかります。
出ていくお金を止める
費用がかからない方法です。仕入先への支払いを待ってもらう、銀行への返済を一時的に減らしてもらう。
仕組み:回収そのものはどう進むか
資金繰りとは別に、債権の回収も進める必要があります。
倒産の形によって手続きが違います。破産や民事再生の手続きが始まると、裁判所や管財人から通知が届きます。
この通知には、債権を届け出る期限が書かれています。期限を過ぎると、配当があっても受け取れない場合があります。
まず封筒を開けて、日付を確認してください。
回収できる割合は、多くの場合わずかです。そのうえで、期待しすぎずに手続きだけは進める、という姿勢が現実的です。
具体的な進め方は、弁護士へご相談ください。金額が大きい場合はとくにそうです。
手順:同じことが起きない備えをする
今回を乗り切ったら、次の準備をしてください。
1社への依存度を下げる
売上の3割以上を1社が占めているなら、その1社の倒産で事業が止まります。
いますぐ取引先を増やすのは難しいと思います。ただ、依存度が高い相手を把握しておくだけでも判断は変わります。
経営セーフティ共済への加入を検討する
掛金月額は5,000円から20万円まで、5,000円刻みで選べます。加入後の増額・減額もできます。前納の制度もあります(出典: 中小機構「掛金の前納」・2026年8月7日確認)。
今回のような事態は、加入していた人だけが制度を使えます。苦しくなってからでは間に合いません。
取引条件を見直す
新規の取引先には、初回は前払いか少額からという形にできないか検討してください。信用調査をかける方法もあります。
条件が合いそうであれば、見積もりを取るところからです。相談だけであれば費用はかかりません。
今日やる一歩
このページを閉じたら、最初にやることを1つだけ決めましょう。
- 共済に加入している——中小機構に電話し、貸付の手続きと必要書類を聞く
- 加入していない——倒産先以外の請求書を集計し、資金化の見積もりを2社に依頼する
- 通知が届いている——封筒を開け、債権届出の期限を確認する
参考にした公的資料
- 中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済 制度の概要」——無担保・無保証人、掛金の10倍まで(2026年8月7日確認)
- 中小企業庁「中小企業倒産防止共済制度について」——貸付額の10分の1の掛金の権利が消滅(2026年8月7日確認)
- 中小機構「一時貸付金制度」——限度額760万円・利率年0.9%(2026年8月7日確認)
- 中小機構「掛金の前納」——掛金月額と前納(2026年8月7日確認)
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」——実質的な貸付への注意(2026年8月7日確認)
このページは、資金調達と公的制度の判断材料をお伝えするものです。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。債権の回収や倒産手続きへの対応は、弁護士等の専門家へご相談ください。制度の内容や利率は変わることがあります。
よくある質問
経営セーフティ共済では、いくらまで借りられますか?
中小機構の案内では、回収が困難になった売掛金債権等の額と、納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)のいずれか少ない額とされています。無担保・無保証人で借りられます。
借りると何かデメリットはありますか?
あります。共済金の貸付けを受けると、貸付額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅します。中小企業庁の案内にそう記されています。つまり借りた分の1割は、積み立てたお金から差し引かれる形になります。
取引先が倒産していなくても借りられますか?
一時貸付金という制度があります。中小機構の案内では、取引先事業者が倒産していなくても、解約手当金の範囲内で臨時に事業資金を借りられるとされています。借入限度額は最高760万円、貸付利率は令和6年4月1日時点で年0.9%です。加入後12か月経過かつ納付月数12か月以上が条件です。
共済に入っていない場合はどうすればよいですか?
いま起きている資金不足には使えません。ほかの売掛金を資金化する、公的融資に相談するといった手段になります。ただし今回を乗り切ったあと、加入を検討する価値はあります。掛金月額は5,000円から20万円まで選べ、前納もできます。