飲食店の開業資金|生活衛生貸付という枠
更新日: 2026-08-29
この記事でわかること
- 飲食店営業と喫茶店営業は生活衛生関係営業にあたり、生活衛生貸付の対象業種だと分かります
- 対象となる事業規模は資本金5,000万円以下または従業員数100人以下で、いずれかに該当すれば足ります
- 一般貸付の設備資金は7,200万円、振興事業貸付は設備1億5,000万円・運転5,700万円が限度額です
- 新たに始める人は生活衛生新企業育成資金で、それぞれの限度額に1,500万円を上乗せできます
- 設備資金が500万円を超えると都道府県知事の推せん書が要る点と、許認可との順番を確認できます
目次
まず結論:飲食店には生活衛生関係営業の融資枠があります
飲食店の開業資金を調べると、たいてい「創業融資」の話から始まります。しかし飲食店には、それとは別に生活衛生貸付という枠があります。飲食店営業と喫茶店営業が、生活衛生関係営業にあたるからです。
飲食店営業に含まれるのは、そば・うどん店、中華料理店、すし店、料理店、社交業、一般飲食店です。
一般貸付では、飲食店営業・喫茶店営業の設備資金の融資限度額が7,200万円と示されています。ただしこれは開業費用の相場ではありません。借りられる金額を約束する数字でもなく、制度上の上限です。順番を逆にすると、必要額の検討が雑になります。
やることは単純です。設備資金と運転資金を分けて積み上げ、そのうえで該当する制度の条件と照らす。この記事はその順番で進めます。
新たに事業を始める方には、新規開業・スタートアップ支援資金という選択肢もあります。対象は、新たに事業を始める方か、事業開始後おおむね7年以内の方です。
仕組み:生活衛生貸付は、根拠になる法律が別です
生活衛生関係営業は、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律に基づいています。国民生活に密着した営業として、衛生水準の維持向上や健全な経営などが規定された事業です。
つまり飲食店は、「小さな会社」としてだけでなく、衛生行政の対象事業者としても扱われます。
この二重の位置づけは、開業準備にそのまま影響します。資金の枠を調べる作業と、営業に必要な許認可を調べる作業が、別々の窓口に分かれるからです。食品衛生法等の一部を改正する法律(平成30年法律第46号)では、営業許可が必要な業種の見直しが行われました。さらにHACCPに沿った衛生管理の制度化に伴い、営業の届出制度も創設されています。
融資と営業規制は、確認する目的が違います。資金の枠だけを見て終わらせないことが、準備の抜けを減らす近道です。
条件:資本金5,000万円以下または従業員100人以下
飲食店営業・喫茶店営業で対象となる事業規模は、はっきり示されています。資本金5,000万円以下、または従業員数100人以下です。この二つは、両方を満たす必要がありません。いずれかに該当すれば、示された事業規模の条件にあたります。
注意したいのは従業員数の数え方です。ここでいう従業員数とは、3ヵ月以上の期間を定めて継続雇用されている従業員の数を指します。法人の役員は含みません。個人企業の事業主と家族従業員も含まれません。
日常の感覚で「うちは何人」と答えると、制度上の人数とずれます。申込前に、定義どおりに数え直すのが確実です。規模の条件に該当することと、希望額を借りられることは別の話です。ここで判断するのは、制度を検討できる事業規模かどうかだけです。
費用:設備資金と運転資金を、項目ごとに数えます
資金計画は、設備資金と運転資金に分けるところから始めます。合計額だけを先に書くと、どの項目にいくら必要なのかが見えなくなるためです。
設備資金として挙げられている項目は、次のとおりです。
- 店舗取得費:敷金・保証金等
- 工事費:内装工事・電気工事
- 厨房機器
- 什器・備品
- 看板工事
物件に関する支出、店を整える工事、営業で使う機器。この三つを混ぜずに並べると、合計の根拠を人に説明できる形になります。
運転資金として挙げられている項目は、次のとおりです。
- 食材・酒類仕入れ
- 家賃
- 人件費
- 水道光熱費
- 広告宣伝費
- 消耗品費
- その他諸経費
運転資金は、営業を始めた後に出ていくお金です。仕入れのように売上と連動するものと、家賃のように毎月固定で出るものを、同じ行にまとめないでください。ここで一般的な開業費用の相場に自分の店を当てはめないことが大切です。相場は他人の平均であって、あなたの物件の敷金でも、あなたが入れる厨房機器の値段でもありません。
書き方はシンプルで構いません。「設備か運転か」「何に使うか」「金額はいくらか」の三つを、一行ずつ対応させるだけです。
比較:一般貸付・振興事業貸付・新企業育成資金の枠
生活衛生融資の一般貸付では、飲食店営業・喫茶店営業の設備資金について7,200万円が融資限度額とされています。返済期間は全業種で13年以内、据置期間は1年以内です。
ただし、返済期間が7年を超える場合は据置期間が2年以内になります。
振興事業貸付は数字が変わります。設備資金は1億5,000万円、運転資金は全業種で5,700万円が融資限度額です。返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内で、据置期間はどちらも2年以内とされています。
新たに開業する人に直接関わるのが、生活衛生新企業育成資金です。対象は、生活衛生関係の事業を新たに始める方と、事業開始後おおむね7年以内の方です。
この資金は、それ自体が独立した枠ではありません。一般貸付や振興事業貸付の設備資金・運転資金それぞれの融資限度額に、1,500万円を上乗せする形をとります。返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内で、据置期間はいずれも5年以内です。据置期間が長い点は、開業直後の資金繰りに効きます。
防災・環境対策資金という枠もあります。店舗の防火安全の確保などに必要な設備資金が対象で、限度額に3,000万円を上乗せします。返済期間は20年以内、据置期間は2年以内です。
生活衛生関係営業に限らない制度としては、新規開業・スタートアップ支援資金があります。融資限度額は7,200万円で、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内、据置期間はいずれも5年以内です。比較するときに、限度額だけを横に並べても意味がありません。対象者・資金使途・返済期間・据置期間を一組にして読むと、自分の計画に合う枠が残ります。
手順:許認可と融資は、順番を間違えないようにします
飲食店の営業には、保健所の飲食店営業許可が必要です。あわせて食品衛生責任者の設置が必須とされています。収容人数が30名以上になる場合は、防火管理者の設置も必須です。席数を決める段階で、この線を越えるかどうかを確認してください。
午前0時から6時に営業して酒類を提供するなら、届出がもう一つ増えます。管轄の警察署へ深夜酒類提供飲食店営業開始届を出す必要があります。しかもこの営業は、地域によっては認められない場合があります。営業時間と酒類提供の有無を決めたら、営業予定地を管轄する警察署に確認するのが先です。
では融資はどうなるか。許認可の取得は、融資後に確認する条件となるケースが多いとされています。
つまり「許可が下りてから相談に行く」と決め込む必要はありません。営業形態から必要な許認可等を洗い出し、同時に資金使途を設備資金と運転資金に分けて、該当する融資枠と必要書類を確認していきます。最後にいつ・どこへ・何を出すかを一つの順番表にまとめます。
注意点:500万円を超える設備資金には推せん書が要ります
見落とされやすいのが必要書類です。一般貸付の申込みには、都道府県知事の推せん書が必要とされています。ただし例外があります。設備資金の申込金額が500万円以下なら不要です。
したがって、設備資金が500万円を超えるなら、推せん書を準備する前提で進めることになります。限度額の7,200万円だけを見ていると、この一行を見落とします。振興事業貸付では、必要な書類そのものが変わります。生活衛生同業組合の長が発行する振興事業に係る資金証明書が必要です。
制度と必要書類は一対で確認する。発行元が都道府県なのか組合なのかで、準備にかかる時間が変わります。
最後にもう一度書きます。融資限度額は資金計画の目標額ではありません。必要な金額を先に確定させてから、届く制度を選んでください。
すでに開業していて、売掛金の入金待ちで資金が足りない場合には、次の方法もあります。
今日やる一歩
今日やることは一つです。開業資金の項目表を一枚作ること。金額が未確定でも構いません。まず項目名をすべて並べます。
左側に設備資金として、店舗取得費、工事、厨房機器、什器・備品、看板工事を置きます。右側に運転資金として、仕入れ、家賃、人件費、水道光熱費、広告宣伝費、消耗品費、その他諸経費を置きます。
次に、事業規模を書き込みます。資本金5,000万円以下か、従業員数100人以下かを、制度上の数え方で記入してください。
営業条件も一行にまとめます。飲食店営業許可、食品衛生責任者、収容人数が30名以上かどうか、営業時間、酒類提供の有無。この五つです。
最後に、検討する制度名の横へ、限度額・返済期間・据置期間・必要書類を書き足します。数字と条件を同じ行に置くと、比較の手間が一気に減ります。この一枚ができれば、確定している欄と未確認の欄が分かれます。残った空欄が、次に調べることのリストになります。
参考にした公的資料
- 日本政策金融公庫「生活衛生融資のご案内(令和8年度版)」
- 日本政策金融公庫「居酒屋の創業ポイント」
- 厚生労働省「営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報」
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
本記事は公的機関が公表している情報をもとにした一般的な解説であり、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。
よくある質問
飲食店は生活衛生貸付の対象ですか?
飲食店営業と喫茶店営業は生活衛生関係営業にあたり、事業規模などの条件を満たせば生活衛生貸付の対象になります。
一般貸付の設備資金はいくらまでですか?
飲食店営業・喫茶店営業における一般貸付の設備資金の融資限度額は7,200万円です。
開業資金にはどの費用を含めますか?
店舗取得費や工事、厨房機器などを設備資金に、仕入れや家賃、人件費などを運転資金に分けて数えます。
推せん書はどんなときに必要ですか?
一般貸付には都道府県知事の推せん書が必要ですが、設備資金の申込金額が500万円以下の場合は不要とされています。