償還請求権ありのファクタリング|見分け方

更新日: 2026-09-05

この記事でわかること

  • ファクタリングは法的には債権の売買であり、売主が買い戻す約束を負うと売買から離れていきます。
  • 金融庁は、売主が債権を買い戻すこととされている場合などは貸金業に該当するおそれがあるとしています。
  • 貸金業に当たるかは、ノンリコースの記載といった形式だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されます。
  • 金融庁が挙げる裁判例では、不払いのリスクが誰に移ったかが判断の分かれ目になっています。
  • 年109.5%を超える利息の契約をした場合、消費貸借契約自体が無効になるとされています。
目次

まず結論:買戻しを求める契約は、売買から離れていきます

ファクタリングは、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。売掛債権等を期日前に、一定の手数料を差し引いて買い取ってもらう資金調達の一手段だと金融庁は説明しています。

売買である以上、売った側は代金を受け取って終わりです。取引先が払わなかったとしても、その損は買った側が負います。

ところが、契約書のどこかに「売主が買い戻す」という約束が入ると、話が変わります。

損は結局、売った側に戻ってきます。これは売買というより、債権を担保にお金を借りた形に近づきます。金融庁は、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるものは貸金業に該当するおそれがあるとしています。

見出しに置いた「償還請求権」とは、この買い戻しや支払を求められる権利のことです。難しい言葉ですが、確かめる中身は単純です。取引先が払わなかったとき、最後に誰が損をするのか。契約書でそこだけを追えば、性質は見えてきます。

仕組み:金融庁が挙げた2つの型

机の上で書類を読み込んで確認している様子
契約の型は、条文の名前ではなく資金の流れに現れます

金融庁は注意喚起の中で、具体的な場面を挙げています。前提となるのは、譲渡した債権の回収(集金)が、業者から売主に委託されているという形です。

そのうえで、売主が集金できなかった場合に次のようなものは、貸金業に該当するおそれがあるとされています。

  • 売主が債権を買い戻すこととされている
  • 売主自身の資金により業者に支払をしなければならないこととされている

2つは別の型です。片方は債権を戻す約束、もう片方は自分の財布から払う約束になります。呼び方は違っても、行き着く先は変わりません。

取引先の不払いという損を、売主が引き受けているという点で共通します。

契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」と書かれていても、この形になっていれば同じ扱いを受けうる。金融庁はそう述べています。表題は判断の決め手になりません。

条件:契約書のどこに現れるか

机の上に積み上げられた書類の束と眼鏡
買戻しと支払義務は、条項の名前ではなく中身で見ます

読む順番を決めておくと、迷いません。

まず集金を誰がするかを探します。売主が取引先から受け取って業者へ渡す形なら、金融庁が挙げた前提に当てはまります。次に、取引先が払わなかった場合を扱った条項を探します。ここに買戻し、返還、補填、支払といった言葉が出てくるかを見ます。

言い回しは契約書ごとに違います。言葉ではなく、お金がどちらへ動くかで判断してください

見落としやすいのが、期限つきの買戻しです。いつまでに買い戻すという書き方をされていれば、それは売主が損を負う約束にあたります。

もうひとつ、金融庁が偽装ファクタリングの疑いがあるケースとして挙げているものがあります。業者から受け取る金銭、つまり債権の買取代金が、債権額に比べて著しく低額である場合です。

手数料の重さは、性質を測る材料にもなります。

ファクタリングが違法になる場合と業者の見分け方を読む

比較:貸付けではないとされた例と、貸付けとされた例

金融庁は注意喚起の参考として、実際の裁判例を挙げています。結論だけでなく、どんな事情が重く見られたかを並べると輪郭がはっきりします。

まず、貸金業に該当しないと判断された例です。

東京地裁 令和2年9月18日判決では、業者が償還請求権を有しておらず、売主としても債権の買戻しを予定していないことなどが挙げられました。実質的にも不払いリスクが業者に移転していると評価できること。対抗要件具備は猶予されているものの、業者の判断で具備が可能であったこと。手数料が担保目的を推認させるほど大幅ではないこと。これらを総合考慮し、貸金業法は適用されないと判断されています。

東京高裁 令和4年6月15日判決も同じ方向です。回収できなかった額について売主が責任を負うものとはされておらず、無資力の危険の負担が業者に移転したと認められること。手数料も担保目的を推認させるほど多額ではないこと。こうした点から、債権の確定的な売買であると判断されました。

次に、貸金業に該当するなどの判断がされた例です。

大阪地裁 平成29年3月3日判決は、業者が不払いリスクをほとんど負っていないこと、債権の額面とは無関係に金員の授受がされていたことなどを考慮しました。結論は、金銭消費貸借契約に準じるものという判断です。

東京高裁 令和3年7月1日判決では、公正証書が決め手のひとつになりました。債務者が弁済しなかった場合に、売主が債権額以上の金額を業者へ支払う旨の公正証書を作成していたのです。業者が負担すべきリスクを負っていないとして、貸金業法上の貸付けに当たると判断されました。

名古屋地裁 令和3年7月16日判決は、少し角度が違います。売主は債務者の資力を担保しないと規定されていました。それでも譲渡債権の性質や、債権譲渡日から支払日までの期間の短さから、不履行の可能性は極めて低いとされたのです。結果は、貸金業法上の貸付けに当たるという判断でした。

札幌高裁 令和4年7月7日判決では、売主の置かれた状況が見られています。債権譲渡が発覚すると取引先の信頼を損ね、事業の継続が困難になる。だから何としてでも買戻期限までに買い戻さなければならない状況にあった。業者もそれを認識していたとされました。事実上、譲渡債権を担保とする金銭消費貸借に近い経済的機能を有していたと評価され、公序良俗に反し無効と判断されています。

注意点:「ノンリコース」と書いてあるだけでは足りません

ノンリコースとは、売却した売掛債権等が返済不能になっても、売却した事業者に返済義務は生じないことをいいます。金融庁はそう説明しています。

安心できる言葉に見えます。ただし金融庁は、形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されると続けています。

この点をそのまま示した裁判例があります。東京地裁 令和4年3月4日判決です。

契約にはノンリコースの規定が設けられていました。しかし別のところで、売主が表明保証を求められていたのです。抗弁事由が存在しないこと、支払い停止の状態にないこと、破産手続き開始原因が存在しないこと。つまり、不払いの兆候等がないことを売主が保証する形でした。

これは売主に債務の保証を求めているのに等しいとされ、金銭消費貸借契約に該当すると判断されています。

「ノンリコース」の文字を見つけたら終わり、ではありません。その先に、実質的に責任を戻す条項が置かれていないかを読んでください。

手数料を年利に直して重さを確かめる

費用:上限金利を超えた契約はどうなるか

貸金業に当たると判断されると、適用される規制が変わります。

貸金業を行うには、財務局又は都道府県の登録を受ける必要があります。無登録営業は刑事罰の対象です。さらに、貸金業を行う場合は利息制限法及び出資法の上限金利を守らなければなりません。

出資法の上限金利を超える利息の契約、支払、受領は、いずれも刑事罰の対象とされています。

金融庁は、もう一段強い効果にも触れています。年109.5%を超える利息の契約をした場合、消費貸借契約自体が無効になるというものです。

近時は、ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在も確認されているとされます。手数料が重い取引ほど、性質そのものを疑う理由が増えていきます。

高額な手数料を払えば、かえって資金繰りは悪化します。多重債務に陥る危険性があると金融庁は注意を促しています。

ファクタリングとは何かを一から読む

手順:契約前に確認する順番

契約書に署名しようとしている手元
署名の前に、確認する順番を決めておきます

順番を固定しておくと、焦っている日でも抜けが出ません。

  1. 集金を誰が行うかを確かめる
  2. 取引先が払わなかった場合の条項を探す
  3. 買戻し・返還・補填・支払という言葉の有無を見る
  4. 表明保証の条項がないかを確かめる
  5. 買取代金が債権額に比べて著しく低額でないかを計算する
  6. 公正証書の作成を求められていないかを確かめる

1つでも当てはまったら、その場で署名しないでください。

金融庁は、少しでも心配な点があれば、法律の専門家である弁護士に相談するなどして、違法な取引が行われないよう留意することを呼びかけています。

判決の中身は自分でも読めます。裁判所の裁判例検索で、日付と裁判所名から探せます。相手の説明ではなく、原典で確かめるという姿勢が、いちばん確実な防御になります。

注意点:厳しい取立てを受けたときの相談先

金融庁は、悪質な業者から業務の平穏を害するような取立てが行われるおそれがあるとしています。

限度を超えた取立ては、それ自体が犯罪になりえます。最高裁判所の判例では、権利の実行について、権利の範囲又は社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱するときは違法となるとされています。この場合、恐喝罪又は脅迫罪が成立することがあるとされました。

金融庁が挙げているのは、最高裁判所 昭和27年5月20日判決です。

悪質な取立ての被害に遭った場合には、警察に相談してください。金融庁はそう呼びかけています。

支払えないことと、取立てに耐えることは別の問題です。先に相談してよいと考えてください。

「審査が甘い」で選んではいけない理由を読む

今日やる一歩

手元に契約書か見積書があるなら、今日の一歩は1か所を探すことです。

探すのは、取引先が払わなかった場合を書いた条項です。見つかったら、その段落を声に出して読んでみてください。

損が売主に戻る書き方になっていないか。買戻し、返還、補填、支払。この4語のどれかが出てきたら、印を付けます。

ノンリコースの記載があっても、そこで読むのをやめない。表明保証の条項が別にないかを続けて探します。

まだ契約前なら、順番はもっと簡単です。債権額実際に受け取れる額を並べて書き、その差を確かめます。著しく低額でないかを、自分の数字で見ておきます。

不安が残るなら、署名を先に延ばしてください。今日の一歩は、署名しないという判断でもかまいません。

参考にした公的資料

このページは資金調達の判断材料をお伝えするものであり、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。制度や条件は変わることがあります。実際のお手続きの前に、必ず各機関・各社の公式サイトでご確認ください。

よくある質問

償還請求権があると、そのファクタリングは違法になりますか?

直ちに違法と決まるわけではありませんが、金融庁は経済的に貸付けと同様の機能を持つものは貸金業に該当するおそれがあるとしています。

契約書にノンリコースと書いてあれば安心ですか?

安心とは言えません。金融庁は、形式的な要素だけでなく経済的側面や実態に照らして判断されるとしています。

買い戻しではなく、自分の資金で支払う約束なら問題ないですか?

金融庁は、売主自身の資金により業者へ支払をしなければならないこととされているものも、貸金業に該当するおそれがある例として挙げています。

厳しい取立てを受けたときはどこに相談しますか?

金融庁は、悪質な取立ての被害に遭った場合には警察に相談するよう呼びかけています。

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